すっぴんで勝負
最近テレビで暑化粧のタレントのすっぴんはどうなのかという企画をよくやっています。いろいろな人が化粧でのごまかしばかりでなくて、すっぴんの肌を綺麗にしたいと思うようになっています。すっぴんの肌がすべすべしていると化粧のりも良くなって、会う人への印象も大分変わってきます。私は娘のアトピーの漢方の塗り薬を作っていく段階でたまたまできた Cクリームをすっぴんの肌を綺麗にするクリームとして使っています。このクリームは患者さんに誠に評判が良くて、飲みに行く時などはおみやげに持って行くと大変喜ばれます。
さて、素肌は手間とお金をかければ綺麗になりますが、人間としての心のすっぴんはなかなか簡単には綺麗になりません。持って生まれた遺伝子も良い物ばかりではありませんし、過去から現在の生活の経験も人間は楽な方へ楽な方へと行動する傾向にあり、心のすっぴんを鍛えることは難しい作業です。ですが、この低成長の時代に世の中は見せかけではなくて、心のすっぴんの強い人や優しい人が人気が出てくるようになりました。ただ地位が高いとかお金を持っているとか、見てくれが良いとかでは認めてくれなくなっています。この長く続く不景気の中で日本人が変化した唯一の良かったことではないでしょうか。私のところにくる製薬会社の営業の人(MR)も会社にもよりますが、10年前よりははるかに骨のある人を採用されています。就職氷河期の中で採用された新人はどこかに面白くてヤル気を持っています。患者さんも医師に対して正味自分たちに何をしてくれるかを求める様になってきました。
時代が求めている以上は、これからの時代を生き抜くには自分の人間としてのすっぴんの力をつけていくしかありません。4月からは新しい年度が始まります。晴れて大学に入学した人は、学生時代くらい時間があって自由にいろいろなことに取り組める時期はありませんので、沢山の興味を持っていろいろなことにチャレンジして、失敗して反省して次に進んで行きましょう。企業は見せかけの優秀さを求めてはいません。また、就職された方は、急には仕事が出来るようにはなりませんが、一つ一つの仕事を大切にしてどんなにつまらないことでもそれが将来行う華やかな仕事の基礎になることを悟りましょう。人間関係に悩むことも多いと思いますが、世の中にはいろいろなタイプの人が相互に関係して社会を構築していることを知り、だれとでも付き合える心の広さを身につけましょう。将来上の立場に立った時に必ず役に立ちます。
心のすっぴんは、一度どん底に落ちて這い上がって行った時に最も効率的に鍛えられましす。好んでスランプに落ちる必要はありませんが、万が一つまずいた時はすっぴんを鍛えるチャンスだと思うようにしましょう。上に上り詰める人は必ずどん底から這い上がる時期を経験しています。もし私が何らかのトラブルに巻き込まれてこのクリニックも家もなくなったとすると、頼りになるのは自分の今までの人生の中で培ってきたすっぴんの人間力です。そんな最悪の状態でも人間はすっぴんの力があれば何とか立ち直るものです。東日本大震災後の福島や宮城、岩手の人々も今は打ちのめされていますが、10年後には今までよりももっと素晴らしい地域社会を築かれることでしょう。そうやって考えると今まで順風満帆に生きてきた人はある意味では不幸で、将来遭遇するかもしれないトラブルに対して大きな弱点を持って生きていくことになります。
「満ちた月は欠ける」と言いますが良いことは長く続きません。しかし、悪いことも長くは続きません。そんな変化があるからこそ人生は楽しくて、人は失敗しても新しいことに挑戦するのです。特に若い人は失敗を恐れずにいろいろなことにチャレンジしましょう。その内に本当のすっぴんの人間力が形成されます。52歳になった私自身もそのように思っています。