院長の独り言
Monologue

2012.2.29

川内優輝選手に学ぶ

最近マラソンで注目されている選手がいます。川内優輝選手です。大学駅伝で母校ではなく学連選抜の選手として箱根駅伝を走り、企業から声がかからずに埼玉県の公務員として定時制高校の事務職として働きながらマラソンの練習をして、ロンドンオリンピックの候補選手となっています。川内選手はマラソンで一度遅れても、最後に力を振り絞って企業の有名選手を何度も振り切って日本人で1番の成績をおさめています。
 企業に所属する選手はコーチもトレーナーもいて一日中練習にかかわっていても良いのですが、彼は仕事に行く途中もリュックを背負って練習したり夜中に走ったりしてのトレーニングです。この不利な条件で一流選手に互角以上に戦うのですから、現代の恵まれた我々日本人が学ぶ点が多々あります。恵まれてない環境で戦っているからこそ、あの最後の凄い形相の追い込みがあるかもしれません。そんなかれの日頃の生き方に共感する人は多いと思います。
 今回私が彼のことをやっぱり凄いと思ったことがあります。
 ロンドンオリンピックの最初の選考レースの福岡国際マラソンで日本人一位になって、オリンピックの有力な候補選手になったにもかかわらず、先日の東京マラソンにも出場して12位という不本意な成績でロンドンに黄色信号がともったと言われていて、本人もそのように思ったのでしょう。次の日に坊主刈りにして、ロンドンオリンピックは難しかもしれませんが、もっと強い選手になるように頑張りますとコメントしたことに私は感動しました。
 どうしてかというと、自分がオリンピックに向かって練習していて、選考レースの出場もそれに合わせてトライして、あまりにもオリンピックを意識しすぎた自分に気が付いたのでしょう。自分の良さはオリンピックに出場するかしないかではなく、ただ走ることが好きでマラソンレースに出ることが好きで、その中で楽しみながら自分の限界に挑戦することが自分の良いところであるのに、勝つことにとらわれ過ぎた自分を反省した坊主であったのだと思ったからです。今の成績の福岡国際マラソン日本人一位でも十分に選考の対象になるであろうに、そんなことはどうでも良くなったでしょう。もし、運よくオリンピックに出場できればそれも良し、できなくても自分の陸上人生にとって次のオリンピックのための努力の糧になると考えたのでしょう。大切なのはオリンピックに出るという結果ではなくて、日々の精進にこそ自分の持ち味があることを再確認したのでしょう。
 日々の努力の延長線上にたまたま結果があるのであって、結果を欲しがる浅ましい根性の持ち主には良い結果が与えられないものです。まるで歯磨きでもするように毎日毎日同じ練習を繰り返してやる人にこそ神様はご褒美をくれるものです。
 偉くなりたい、有名になりたい、お金持ちになりたい、みんなから尊敬されたいと思って頑張るのは普通の人。そうではなくて自分の哲学を持って日々報われない努力を繰り返すことが大切で、実はそれが自分の望みをかなえてくれる最短の近道なのですね。