院長の独り言
Monologue

2012.1.30

攻守のバランス

今年の箱根駅伝は東洋大学の圧勝に終わりました。昨年僅差で早稲田に敗れた悔しさを一年間持続して持ち続けることができたのが勝因でしょう。山の神柏原選手以外の選手の底上げがなされての大勝利でした。その一方で感動させてくれたのが東京農大の5区の選手でした。あの厳しい箱根の山登りで走りだしてすぐに歩くようなペースになってしまいました。テレビを見ている誰もが棄権しないと危ないのではと思っていました。ところが彼は弱い足取りでも最後まで走り抜けたのです。人間の極限での底力を見ました。柏原選手などのスター選手のような派手さはありませんが、大変な根性の持ち主できっと将来は成功した人生を歩むことでしょう。
 一般的に駅伝やマラソンを好んで見る人は守備的な人が多く、サッカーや野球が好きな人は攻撃的な人が多い様に思います。選手自身も同様でサッカー選手野球選手は自分がリーダーになって得点をしたいと思っていて、駅伝選手は自分が少しでも頑張って走って襷をつないでチームの勝利に貢献したいと考えているように思います。どちらが良いとか悪いとかではなくて持って生まれたその人の本能がそうさせるのだと思います。日本の企業は駅伝選手のような人材を好みます。大企業になれば一人の力でどうにかなる仕事はなくてチームで襷をつなぐ精神が必要だからです。箱根駅伝を経験した選手はサポートした人も含めて企業が好んで採用するのはその為です。
 一方、元プロ野球選手や元サッカー選手が引退後に就職に苦労するのは、自分一人の力で何とかして試合を決める経験を何度もしていて、別の社会に出てみてそのギャップを埋めるのに時間がかかるからです。
 箱根駅伝の選手の血液型の一覧を見るとA型が圧倒的に多く、サッカーと野球は野生的なB型の確率が増えているのも競技の特性を表しています。ところが本当のトッププレイヤーになるとサッカーでも野球でも攻撃も守備も一流になってきます。攻撃型の選手がある時に守備の大切さを心から認識した時に一流への扉が開くのです。逆はなかなか難しく守備の選手は攻撃力の大切さは分かっているのですが、フィジカル的な素質がないので一流になるには大変な努力が必要になってきます。守備型選手のトップにいるのが、イチローや桑田投手であると考えます。自分の筋力的な素質が松井や清原のようにないのを節制と工夫で補っていたのです。ですから後輩を飲みに連れていくこともないので、変わり者扱いをされたと思いますが、彼らは自分がやるべきことを明確に理解しているので誰になんと言われようと信念を貫くことが出来るのです。
 つい先日、島根が誇る錦織圭選手が全豪オープンでベスト8になりました。日本人で何十年ぶりの快挙でした。小学生の時に松岡修造に素質を見出されて、中学生の時に単身でアメリカに渡って大変な修行を行なって今日があります。エアーKという飛び上がってのスマッシュは身体的な弱点を補う得意技ですが、それに頼って体力を消耗して、守備も疎かになっていて怪我もあってスランプに陥っていました。そこで今のコーチの進言で守備を徹底的に鍛えてミスを少なくしていく戦法をとってから快進撃が始まったとのことです。
 誰しも持って生まれた特性があり、画期的な仕事をするが攻撃的な人もいれば、きっちりと仕事はこなすがもう一つ積極性に欠ける守備的な人がいます。前者は明るく後者は暗い感じがします。それは先祖からもらった大切な遺伝子なのでどうにもなりません。しかし、イチローや桑田、錦織圭の様に工夫して自分の弱点をアイデアで補うことはできます。その補いをできるかどうかが人生の成功の鍵のようなきがします。
 最近の若い男性は草食系で内向きになっていると言われています。女の子に告白する勇気もなく恋愛している男女も少ないように思います。このままでは本当に少子化が進んで日本は没落してしまいます。少し守備的になっている方は肉でも沢山食べて男性のリーダシップを取り戻してほしいと思います。また、自分が目立ちたくて攻撃的になりすぎている方は、少し視野を広げて守備のことや自分をサポートしてくれている人のことをもう少し考えてみてはどうでしょうか。KY的な行動で少し社会で浮き気味になっている自分が、誰からも認められるようになって心から尊敬されるようになりますよ。この私も少し攻撃的な面がありますので、努めて守備の方を重視して生活するようにしています。