院長の独り言
Monologue

2011.8.31

息子の夏休み

私はことしの12月で52歳になります。また、10月で開業して12年経過したことになります。30歳から40歳までの間は雇われ院長をやっていて、いろいろなアイデアが次々に出てきて何でもできるような錯覚を持っていました。自分の夢も持っていました。大した夢ではありませんが、クリニックを作って多くの人の役に立ちたい位のことです。その目標にに向かって一歩一歩努力してきて、まだ不完全ながらもまずまずの合格点はあげられるのかなと思っていますが、その様に思うことが年を取って来たのだなと思います。
 若い頃、草原に立っている自分にとって進む道が目の前にない不安もありましたが、どの方向にも道を造ることができる可能性がありました。それから10年20年が経過した今は、トンネルの中の一本道の先にある小さな出口の光に向かってひたすら進む自分がいます。どの方向にも逃げる事は出来ず、脇道もありません。ただ一本道をひたすら歩くのです。夏休みで息子が帰っていましたが、その若さと無限の可能性をうらやましく思いました。大人になるということは自分の理想がどんどんと現実的な考えに移行してきて、自分の可能性が狭くなって行く事なんだなと思うようになりました。私自身も50歳を超えて少し記憶力も落ちて来て、仕事の能率が少し悪くなって来た部分を今まで生きてきた知恵でカバーしている状態です。
 そんな私を勇気づけてくれる二人のプロスポーツ選手がいます。一人はカズことサッカーの三浦知良選手44歳、もう一人はテニスのクルム伊達選手40歳です。二人ともすでに選手としてのピークは過ぎていますが、 自分の子供の様な選手と戦っています。二人とも若い頃は少し生意気な発言もありましたが、今は円熟して若い選手の見本となって人一倍練習もするし、未だに人々を感動させるプレーをしています。カズは日本のサッカーの礎を築いたと言っても過言ではないのに、ワールドカップには一度も出場していません。フランス大会の直前に岡田監督に外されました。スタメンで起用することはなくてもチームをまとめるベテランとして選んでも良かった様に思いますが、当時の岡田さんにはそのような裁量はありませんでした。昨年のワールドカップで岡田監督は一度も使う事のない川口能活をベテランのまとめ役として連れて行って成功しました。きっとフランス大会でのカズの失敗を教訓にしたのかもしれません。
 カズやクルム伊達が若い選手よりも練習をして、体の手入れも入念に行って今のレベルを保っていることは、私自信の生活においてとても参考になります。 誰でも公平に年は取り若い頃の様な切れはなくなりますが、それまで以上に努力を重ねて自分の仕事のレベルを少しでも向上させることが大切なのですね。エネルギーは少なくなっても円熟した技は磨きをかけることは出来ますからね。また、もっと大切なのはカズやクルム伊達の様に、そのことを最も好きになって楽しむことですね。楽しくやっている人が一番強いですね。
 先月取り上げた私の恩師の小村先生も剣道や人間が本当に好きであった事があれだけの実績を残したのだと思います。
 息子が一人前になるのが15年から20年かかるとすると67歳から72歳まで長いトンネルをひたすら努力を重ねて歩んで行く為には、常に新しい機軸を追究して毎日を楽しく過ごすことが大切だと思い、来月から千葉におられる漢方薬の師匠のもとで月に1回もう一度勉強することにしました。カズやクルム伊達の様には行きませんが、老いに対するささやかな抵抗を行ってみます。
 昨日長男は北里へ帰って行きましたが、彼の夏休みにそんなことを考えてみました。