院長の独り言
Monologue

2010.10.28

技術の前に人間を磨け

元楽天の野村克也は私の好きな野球人の一人です。以前はそれほど好きではなかったのですが、弱小球団の監督を引き受けてはいろいろな工夫をして選手を育てる姿に感銘を受けることが増えてきました。
 最も彼の言葉で優れていると思うのが、彼が高校時代の恩師からプロ野球で活躍するようになって言われた言葉の「技術の前に人間を磨け」という言葉を座右の銘にしていることです。彼自身はお金がない中、南海の鶴岡監督に恩師が頼み込んでくれてプロ野球にテスト生で入団して、努力を重ねてやっと一軍で活躍するようになった時に技術の前に人間を磨けと言われて、三冠王をとっても有頂天にならずに自分の人間を磨く努力をして、ぼろぼろになるまで幾多の球団を渡り歩いて野球を続けています。まだ若いその頃には本当の意味での恩師の言葉は理解してなかったかもしれませんが、引退して監督になってからはその「技術の前に人間を磨け」の言葉が大いに役立ったようです。
 野球の監督をする上で大切なことは、選手との信頼関係を築いたり、活躍しそうな選手を見抜いて抜擢したり、楽天のマー君のように素質のある選手は有頂天にならずにさらに精進させたり、二流の素質しかない選手には彼にしか出来ない仕事の意義を教えたりする積み重ねでチームを強くさせているのです。野村さん自身も決して素質のある選手ではなくて努力と創意工夫で成功をつかんでいるので、下のものの気持ちや上にたつもののおごりがよく分かるのだと思います。
 野村監督は「親孝行な選手は大成する」とも言っていますが、苦労かけて育ててもらった親に感謝する気持ちのない選手は、自分を支えてくれている多くの人達に感謝をしないので、たとえ活躍しても一瞬で終わってしまうことを知っているのでしょう。イチローなど超一流プレイヤーはみんな親孝行で、自分も大切にするし、仲間も大切にします。
 自分一人で偉くなったと勘違いする人をよく見かけますが、そういう人は一般社会でも一時的な成功はあっても、栄光は長く続きません。技術の前に或いは同時にでも人間を磨く努力をする人が息の長い成功をつかむと思います。野村さん自身も現在の自分も完全に磨かれた人間だとは思ってないと思いますが、少なくとも人間力もつける努力が大切だと言っているのだと思います。
 私自身が自分の今後の人生を考えて見た時に、自分が一番可愛いのは誰しも同じだと思いますが、自分の利益のために他人に迷惑をかけることだけは慎むように心がけていきたいと考えています。医師としての技術を磨くと同時に人間を磨くことが大切で、そうすることで私の周りの全ての人を有意義にして、ある時点で大切な閃きが生じてくるような気がします。実際には死ぬまで大いに人間を磨く努力をする必要があります。
 あの人の技には心がこもっていると言われるように、技術と同時に人間を磨いてみませんか。今からでも遅くはありませんよ。