院長の独り言
Monologue

2006.10.23

誤診

今、巷で医療ミスが大きく報道されています。医師の倫理にかける症例もあれば、これは運が悪く、報道が過剰で気の毒に思うような症例もあります。当院はいろいろな症状の患者さんが来院されるために、いつ自分もミスを犯すのではないかと不安に思いながら日々診察を行っています。弁護士や税理士などのミスは命に直結しませんが、医師のミスは生命の危機に直結するので、日々の診察はかなりのストレスです。一日の診察が大過なく終了すると、まさに神に感謝の気持ちになります。
 皆さんは、名医と名の付く医師は誤診しないとお考えでしょうか。もし、そうならとんでもない勘違いです。どんな優秀な専門医でも必ず誤診します。もちろん小生のような凡医は当然誤診します。それは、CT,MRI,PETなどどんな精密な検査機器を使用しても、どんなに優秀な医師でも人間の体を100%解明するのは不可能で、100年後の医学の進歩をもってしても無理だと思います。それだけ人間の体は精巧に作られているのです。10年前の学説が現在全く逆の説になっていることはよくあります。ではなぜ、誤診しても大抵の医療機関では問題とならないのでしょうか。それは、1回目の診察では誤診しても、2回3回と診察していくうちにいろいろな情報が豊富になり、状況証拠の積み重ねで犯人を突き止めることができるからです。優秀な医師は初診の診断を修正出来るように、初診時から自分の誤診を想定して、検査を積み上げていくのです。極端な話、初診時には今すぐ命に関わる状態かどうかの判断さえ間違えなければ良いのです。慢性疾患はじっくりと長期戦の構えで診療し、急性疾患は生死の見極めが大切なのです。最近は、患者さんの知識も豊富なので、怪しい診断だと思えば医師を変えてみる選択も正しいのです。医師のプライドよりも患者さんの命の方が最優先です。
 一般の人間関係でも、一見良い人に見えた人が悪い人であったり、その逆もよくあることです。深くつきあって初めてその人の人となりがわかることとよく似ています。どんなにすばらしい人かと思って結婚しても、離婚になってしまうのは男女の恋愛の誤診によるものです。
 そんなにストレスのかかる医師の仕事ならやめてしまえば良いではとの考えもありますが、何年たっても克服出来ない医療だからやりがいがあるのです。すぐにコンピューターで解析できるような簡単な医療なら、多くの医師が仕事を変えていると思います。恋愛も失敗があるから、成功の喜びがあるのかもしれませんね。私は、ゴルフが趣味ですが、ゴルフも同じようなスポーツで何回成功しても次のショットで成功するとは限りません。だから飽きないのです。もし、最近、結婚されたカップルがこの文章を読まれたならもうお分かりですね。わかりにくい配偶者だからこそ、それを克服しようと長続きするのですよ。参考にしてください。