院長の独り言
Monologue

2023.9.26

君はどう生きるか:もう一つの主題

 君はどう生きるかの本に出てくるコペル君はコペルニクスに名前の由来があります。コペルニクスは16世紀に、それまでカトリック教会を中心に唱えていた天動説を覆して、太陽を中心とした地動説を唱えました。当然教会から危険思想と決めつけられて、かなりの迫害を受けました。世間の人もコペルニクスに賛同して地球が動いていると考えるのは薄気味悪く、多くの人が彼を白い目で見ていたと思います。それでもコペルニクスは訴え続けて行き、ガリレオが続いて今では小学生でも地動説を知っています。

 人間は天動説のように自分を中心に物事を考えるように出来ています。ある場所を考える時に、自分の家からどのくらい離れているのか考えてしまいがちですが、本当は地図から考えてどの位置にあるのか考えることができる人は少数なのです。自分を中心の考えではなくて、大きく全体から物事を考えることが出来る人が真実に近づくことが出来るのです。

 会社や自治体のリーダーがイエスマンばかりを周りに配置して、辛口の意見を述べてくれる貴重な人を遠ざける傾向が多くあるように思います。確かに耳障りの良いことをいつも言ってくれる人を周りに置いた方が楽に生きていけるのですが、それでは必ず道を踏み外します。大きな話になるとロシアのプーチンや中国の習近平が行っている政治がわかりやすい例にあたると思います。日本のようにああでもないこうでもないとなかなか結論が出なくて、進化が遅い国が時間はかかっても道を反れないのかもしれません。

 また、何かを主張したり、行動をおこすときに多くの人は他人がどう思っているのか気にするものです。自分が人目にどう映るのかを気にして行動していると、本当に大切なものを見失ってしまいます。

 この本やジブリの宮崎監督が子供たちに言いたかったのは、他人の評価に惑わされずに大きな力に疑問を持ち、自分が信じた考え方を貫く勇気を持って欲しいということではないでしょうか。自分が信じた大切な何かを見つけたら、ひたすらそれに向かって邁進して欲しいということではないかと考えます。

 古来から、真実と思われる道を多くの妨害や他人の冷たい視線にもめげずに、ひたすら進んで行った人が本物に到達することが出来ています。一方多くの人はその真実に目を反らして安楽な場所で生きています。そこで、さて「君たちはどう生きるのか」と問うているのです。人生の一瞬一瞬でその選択をする必要があります。その時その時で自分で考えて悔いのない人生を送っていきたいものです。