院長の独り言
Monologue

2023.3.26

WBCでダルビッシュ有が教えてくれたもの

 WBCで日本が優勝して国中が盛り上がっています。大谷翔平がMVPに選ばれて彼が一番活躍したのは言うまでもありませんが、私は陰のMVPをダルビッシュを選びます。なぜなら宮崎のキャンプに日本の皆と一緒に乗り込んで若い投手に色々なことを教えていました。また不安に思っている若い選手を食事に連れていって、楽しくやろうと言ってリラックスさせていました。さらに決勝のアメリカ戦では、自分が8回に投げることがはっきりしているのに、直前まで投げる投手にアメリカの選手の特徴を教えていたのです。自分は陰になって日本が勝つためにコーチの様な役割を演じていたのです。この件については栗山監督もダルビッシュに申し訳なかったとコメントしています。

 では、なぜ日本にいる時にはヤンチャであったダルビッシュがこのように献身的な選手になったのでしょうか。それは本人が高木豊との対談で述べています。

 日本で暴れん坊のイメージのあったダルビッシュは、大リーグに移籍した後に最初の夫人と離婚して、2人の子供の親権を相手に渡して今でも多額の養育費を払っています。アメリカでレスリングの選手であった山本聖子さんと結婚しました。連れ子が一人いてその子もとても可愛がり、さらに4人の子供を授かって、オフには夫人と子育てを半分の割合で請け負っているとのことです。今回のWBC参加で一番悩んだのが、生まれたばかりの子供の子育てをWBCの期間に夫人に押し付けることになるので悩んでいたようです。ダルビッシュは大リーグの尊敬される選手は野球人である前に一人の夫であり、一野球人である前に一人の人間でなくてはならないとの結論を得たようです。山本聖子さんの教育が良かったのか、大リーグでの生活が良かったのかははっきりわからないとのことですが、いずれにしても彼は素晴らしい人間性を手に入れました。その結果において、日本を優勝させるために自らを犠牲にできたのだと思います。さらに今年36歳ですが、6年間で142億円の契約を球団と結んでいます。若いころなら可能ですが、36歳で6年契約を多額のお金で結ぶことが出来たのは、たとえ選手として活躍できなくなっても、ダルビッシュが球団に対して献身的に働いてくれることを期待しての契約だと私は思いました。

 さてこのことを一般論に置き換えてみると、医師である前に一人の人間であり夫である。政治家である前に一人の人間である。全ての職業人である前に一人の夫であり人間であるということになります。男尊女卑の思想がまだ残っている日本社会に、また先生と呼ばれる職業だからと偉いと勘違いしている人々に、ダルビッシュがどうしたら人から尊敬されて本当の幸せとは何かを教えてくれた大会であったのだと思います。

 アメリカに勝ってただ喜んでいるのではなくて、ダルビッシュが教えてくれた教訓を自分のものにしてみたいものです。