今後の参考になったオリンピック競技
今回のオリンピックを振り返って見て私が一番印象に残っているのは、男子4x100mリレーの決勝で一走者の多田修平から山縣亮太選手へのバトンミスの場面です。非常に残念な結果ではありましたが、これからの日本にとって非常に大切な試みであったと私は考えます。過去2回のオリンピックで銅メダル銀メダルと続けてメダルを取ったのは日本人の器用なバトンの受け渡しの技術によるものです。一人一人のスピードは世界のトップの選手に比べて劣っている日本選手が勝つには隙間のテクニックで差をつけるしかありません。今回は最下位の記録で決勝進出していてメダルを取るにはぎりぎりのギャンブルで勝負をかけるしかなかったのです。一走者の多田選手が非常に良いスタートをきってトップスピードでのバトンの受け渡すはずがゴールでスピードが鈍ったのと山縣選手のスタートが非常に良かったために失敗に終わりました。これはたぶん選手コーチみんなで話し合って行ったトライであり誰も責めることは出来ないし、むしろ今度のリレーにおいての先駆けとなるトライであったのではないでしょうか。こうすれば失敗するが、そのぎりぎりのところを狙って世界のトップを狙う姿勢を練習ではなくてオリンピックの決勝で行ったことに意義があるのです。大きな舞台での失敗は必ず次の世代の参考になるし、走力で劣る日本が勝つにはバトンの技術を世界の誰も真似できないものにするしかないのです。
私自身の漢方薬の修行も同じ様にして向上させてきました。これでもかこれでもかとトライを重ねて失敗から次の成功への道を切り開いていくのです。日本人は特別に体力知力において他の国の人々に比べて優位なものではありません。ですが、ノーベル賞も多く出していて多くの分野で発明をしてきているのは、このトライして失敗して改良していくこの連続を根気よく行っていくからではないでしょうか。
もう一つ私が勉強になった競技は男子マラソンです。大迫傑選手が6位に入賞したことなのですが、昔は男子マラソンではメダルを日本が獲得したこともありましたが、近年はケニアを始めとするアフリカ勢にかなうことはありませんでした。だいたい走る遺伝子が数段上である上に近年では科学的なトレーニングをアフリカ勢が取り入れているので勝てる見込みはほとんどないのです。大迫選手はどの企業にも属さずに個人がプロ選手となって資金を集めてアメリカやアフリカでトレーニングを積み重ねて今回に挑みました。結果は6位でしたが彼の取り組んできた経過はきっと今後のマラソン界の大きな財産になることでしょう。一人でやってきて、多くの陸上界の重鎮からは変わり者扱いをされての今回のオリンピックであったので、それを今後に生かすためにはリレーとは逆で失敗は許されなかったことでしょう。42.195kmを色々なことを考えての走りであり、今後の日本のマラソン界の未来をずっと考えて走っていたのではないかと私は考えます。きっと彼はマラソンの指導者となって素晴らしいランナーを育成していくでしょうが、自分で考えて自分で行動をして自分で結果を出したという点において大きな財産を得たことでしょう。
オリンピックで活躍して金メダルをとることは凄いことですが、みんながとれる訳ではなくて多くの競技者は失敗しています。私は大きな舞台での失敗こそが人を成長させるといつも考えています。失敗の原因は何なのか。どうすれば勝てるのか。どうしても勝てないのか。勝つための方法をあらゆる角度から検討してみて更に努力を重ねて行くことが、最後に人生の勝利者になれると考えています。
私は12月で62歳になりますが、まだまだこれからも失敗を重ねて自分の目指す医療に向かっていくつもりです。若い人の失敗はなんでもありません。自分が成長するための肥やしだと思って大いにトライしてみませんか。日本社会は一度の失敗を多くの人々が集中して非難する傾向にあるように思います。これこそが日本の最大の弱点ではないかと危惧しています。一度や二度の失敗でその人を立ち上がれないようにする臆病な社会から早く脱却したいものです。