院長の独り言
Monologue

2021.6.23

プロ野球の育成契約選手

プロ野球の世界でドラフト1位といえば将来を一番期待されて入団されている選手ですが、その中で順調に活躍している選手は半分もいません。一方、育成契約といって本来の一軍の試合に出られないが、3年間の間に3軍での活躍が認められて本当の契約選手になって活躍している選手が沢山います。特にソフトバンクでは日本シリーズで活躍した千賀投手、石川投手、大竹投手、尾形投手、大関投手、足の速い周東選手、日本一の捕手の甲斐選手など多くの選手が活躍しています。むしろ何球団もの指名の中で獲得した田中正義投手はどこへ行ったのかと思ってしまいます。
  育成選手は世間では全く無名であっても何か一つ光るものがあって獲得されています。活躍した選手を見出したスカウトこそがまさにプロの眼をもっている一流のスカウトであるのです。そこには選手の性格やハングリー精神の有無など多くの要素を加味しての評価であったはずです。高校野球や大学野球、社会人野球で活躍していなくても育成契約やドラフト下位指名選手であってもハングリー精神を持ち合わせているので、その負けてなるものかと思う精神がパワーとなって人並み外れた努力を重ねた結果で一流選手になって行くのだと思います。もちろん大谷翔平や佐藤輝明選手の様に並外れた素質があってさらに努力してスーパースターになっていくパターンもあります。いずれにしてもプロ野球から声をかけられる程の素質のある選手はドラフト一位であっても育成契約であっても入団してからは横一線での競争であるということです。
  一般社会でも、私が付き合っている中小企業の社長さんはむしろ大学出は少なくて、若いころにヤンキー活動にいそしんでいた人が大半です。それでも経理もしっかり出来ていて、業績を伸ばして立派にリーダーを務めています。先日、中卒で20歳代で年商数億円の会社を複数経営している方が来院されました。その人の話がとても興味深かったのでお伝えします。「自分は現代の教育システムがどうしても合わなかった。そこで親戚の人に土下座をしてお金を借りて事業を始めて数年で借金は返済した。今は土木や不動産の技術者を他よりも給与を高く雇ったら良い人材も集まって来て、仕事の成功によって臨時報酬を高めに払うようにしたらさらに業績も上がってきました。」と言うのです。高校や大学を出ていなくてもちゃんと経済の仕組みも理解していて、労務管理もしっかりしていて大したものだと思いました。
  東京大学は日本一の大学ですが、そこを卒業して政界財界で活躍している人はいますが、世の中を大きく動かしている人は才能の割には少ないように思います。年をとっても東大に入った時の頭脳が維持されている人はいますが、大抵の人間は東大と東大以外も年齢と共に差が無くなってきます。大切なのは東大を卒業後にどのような人生を歩んで来たのかが大切なのです。卒業後に世の中の役に立とうと歩んで来た人はさすが東大卒と言われるけれども、自分のことしか考えずに歩んで来た人は東大卒なのに大したことはないと言われます。長い人生で15歳や18歳で学業の偏差値が高くても、それだけで将来の成功は約束されていないということです。むしろ18歳以降にどれだけ世の中を観察して、その中で自分を生涯にわたって高めていく様に努力を重ねて行ってこそ成功が見えてくるということだと思いいます。
  野球でのドラフト1位が偏差値の高い大学卒の人間で、育成契約の選手がその他と考えると、必ずしも育成契約であってもドラフト1位に負けるものではないということです。人生が85年から90年と考えると、人生は長くどこの時点で人生の勝利者になるのかは自分で選択が出来ます。例え華やかな仕事はできなくても組織の歯車として立派に勤めて行くことや家庭を大切にしてそこに比重を置くもよし、要は自分が納得できる形を作っていけることが大切なのです。
  私自身も島根県の山奥で育っておよそ教育とは全く縁のない中学までの生活を送って、その後は育成契約の様に期待されずに医師となって、その後も大学病院で出世することもなく、若いころから僻地医療に携わってきたのですが、世の中の役に立つ医療を行うことを一心に願ってきた結果が、今日に至っています。誰にでもチャンスが到来するのですが、そのチャンスを逃さないようにするのかどうかは本人次第です。
  どの年齢からでも遅くはありません。自分のためだけでなくて人の役に立つことを考えて生きてみてはいかがでしょうか。その尊い想いと日々の努力の延長線沿いに真の幸せがあるように思います。