新型コロナのクラスター発生のシステム
島根県の松江市のサッカー部の寮で90数名の新型コロナのクラスターが発生したのはご存じだと思います。また、7月に県立大学生の寮生で新型コロナの感染症に一人罹患しましたが、クラスターは発生しませんでした。
両方の学校の医療関係者が知り合いなのでよく話を聞いてみて出た結論がありますので、今回はコロナにかかりにくい最小限の注意事項について述べてみたいと思います。
まずは、県立大学の方ですが、学生の一人が東京の演劇を見に行って確かに新型コロナウイルスに感染して、マスコミを始めとする様々な誹謗中傷の電話が鳴りやまなっかったようです。幹部責任者は大変であったと聞いております。ですが、県からの素早い対応で大学キャンパスにテントをはって3人の医師で手分けをして一斉に600人の学生や職員にPCR検査を行いました。その結果全て陰性で、それ以来マスコミからの電話攻撃はやんだようです。罹患した学生は寮生であったのですが、なぜ広まらなかったかというと全員が寮内でもマスクをして生活するとの指導があって、それをきちんと守っていました。またカラオケや多くの人数で騒ぐなどの行動を控えていたのが広まらなった要因になったと分析されています。例え罹患者とマスク越しに話をしても騒いだり歌ったりしなければ移らないということです。
一方、サッカー部でのほぼ80%以上の感染の広がりはどうかと考えますと、寮内でマスクはしていなくて、当然全国的にも名門サッカー部なので体力もあり、騒いで話をするのはやめろと言っても無理な話です。また常に行動を共にする仲間なので、全寮制の高校生運動部についてのコロナ対策はかなり厳しくしなくては難しいものだと考えます。
もう一つ新型コロナに感染したほぼ全員に近い確率で味覚嗅覚障害が認められたと聞きました。このことは今後、インフルエンザの流行期に突入する時期にコロナとの違いを検討するのに大変役に立つ情報ではないでしょうか。
つまり、新型コロナにかかりにくくして、日頃の生活も出来るだけ規制は最小限にするためには、人込みや対面で会話をする時はマスクをすることは必要ですが、外で道を歩いている時などはマスクは必要がないのではないでしょうか。また、大勢で騒いだり、カラオケで歌ったりは避けた方が良いのですが、対面でなくで共に食事をしたりは問題がないと考えます。インフルエンザの感染力の方がはるかに強いと考えられます。
また、マスコミの論調も感染数が問題ではなくて、重症化率や死亡率が問題なのではないかと少しづつ変わってきていますが、医療現場でも重症が多かった3月、4月に比べれば、軽症化を認めてきています。また、死亡するほとんどがサイトカインストームといって、免疫細胞システムがくるって自分自身の体を攻撃することによるものですが、早期のステロイド投薬によってこれを防ぐ工夫が出来ているので、死亡率はさらに減ってくると考えられます。もちろん、前回も述べたようにウイルスの変異による弱毒化も進んでくるでしょう。
最後の問題は、風評被害です。このことは政治の責任です。なるべく早く正確なデータを国民に示していき、ある程度のところで結核と同じ第二類の感染症指定から下げていくことが必要となってきます。またワクチンの有効率が例え50%程度と低くても、それを打ったことによる安心感が人々に生まれるので、開発されているワクチンの実用化を急ぐ必要があります。
こんな新型コロナウイルスの感染症で世の中が大変なことにはなりましたが、日本の経済にとって良いこともあります。このことは私のように開業している医師にとってはとても辛いことですが、コロナの感染によって医療機関受診者が減って日本の高齢化によっ増大していた医療費が減ってきたのです。何でもかんでも受診していた人が考えて受診するようになりました。団塊の世代が75歳の後期高齢者を占めていく来年くらいから10年から15年の間に医療経済の崩壊が来ると言われていましたが、このまま行くとそれは防げそうな気配になってきました。保険医療で経営が成り立っている私も複雑な心境ではありますが、でも世界に缶たる日本の保険医療制度が崩壊するよりは益しだと考えます。おそらく新型コロナが治まっても、一度国民がこれでもいいんだと知ってしまったら元に戻ることはないでしょう。全ての医師が今後の医者としての働き方の変革を迫られる時期が来ると考えます。
今まで浮かれていた世の中が、本当に正しいこと本当に必要なことを考えて生きていく時代がすぐそこに来ています。明治以来他国の外圧や戦争でしか変われなった日本が、感染症パンデミックによって変わっていく初めての変革になるのではないかと私は考えます。
最近の日本に強烈なリーダーシップを持った政治家が現れないのは、現在の日本が極めて平和で民主的であるからです。現在の日本に強烈なリーダーシップは必要ありません。これからも国民の民度を高めて行って、みんなが本当に大切なことがわかるようになれば益々発展していくと私は信じています