院長の独り言
Monologue

2019.5.30

おごりを捨てて天狗にならないために

人は成功するために努力をします。他人から認められたいためにつらいことにも耐えることができます。日々の努力を積み重ねることによってある程度自分の才能の範囲において成功という栄誉にたどり着くことができます。このことは古来より剣術や商売などすべての出来ことに通ずる簡単な理念であり、努力なしで成功を収めた人はいないと思います。
 ですが、一度手に入れた成功を自らのおごりによって手放した人はかなりの確率であるのだと思います。有名なところでは豊臣秀吉がそうであり、織田信長もおごりからくる油断で部下の謀反で殺されたのです。
 どうして人間は成功するとおごりという悪い虫がついてくるのでしょうか。それを考えて努力することによって本物になれると私は考えています。私の場合で
恐縮ですが、ある程度患者さんも増えて来てお陰様で多くの方々から認められるようになってきました。ここで一番怖いものが自分のおごりであると思います。私はおごりという言葉を私から離していくようにしています。私は誰かと競争するのが昔から嫌いで誰かを目標にしたりすることもしません。学会には専門医の点数を取るためには出席しますが、人の発表は聞かないことにしています。今まで他人の講演を聞いてためになったこともないし、学会での自分の地位を高めるなど私の辞書にはありません。ただただ自分の漢方と西洋医学を併用している医師として真実を追求して、少しでも今よりは進化した自分を目指して日々戦っているからです。言ってみればライバルは過去の自分であり、未熟な自分を少しでも進歩させたいと願っているのです。自分は極めて人間的でなまけ心があり、努力もあまり好きではありません。そんな弱さと日々戦う自分におごりなど起こるはずはないのです。毎月漢方の師匠の寺澤先生のところに行く前日に銀座で友人などを連れて飲みに行った際に、ママさんたちに成功している起業家の多くがライバルは自分であると語っている話を聞きました。
 自分の能力の遺伝子は限られたものであり、その範囲での努力しかできません。それは他人と比べられるものではなく自分は自分であるのです。努力した先の真実には永久にたどり着くことはできなくて、昨日の自分よりは少しでも進歩した自分を目指していくしか成功への道はないと私は考えます。ずっとずっと頂点に達することはないので、おごることもなく天狗になって道を転げ落ちることもないのです。こう考えることは簡単ですが、実際には人間のエゴや嫉妬などという厄介な考えと戦うことになるので行動は簡単ではありません。でも多くの超一流となった人はこのことが理解出来ているのだとおもいます。そうでなければ永遠の努力なんで出来るはずもなく、ある程度の中途半端な地位を得たなら満足してしまい、天狗になり努力をしなくなってくるのです。
 政治家の場合は絶対的な目指すべき道がなくて、他の政治家との比較において地位が上がって相対的な力を持ってくるので厄介です。地位が上がってくるとほとんどの政治家が天狗になってきます。公的なお金があたかも自分が稼いだお金であるかの様な錯覚に陥り、自らの権力で何でもことが進むと勘違いしてしまうのです。小泉純一郎が国民から人気があったのは、そこが異なる稀有な政治家であったからではないでしょうか。
 職人は自らの真理を追究するために、起業家はその企業が社会に貢献して末永く存在するために、政治家は自分のためではなく少しでも市民が幸せな暮らしが出来るようにするために、未来永劫おごることなく努力を重ねて欲しいものです。私もそんな精神を持ち合わせた医師になれるように日々欲望という悪魔と戦って頑張っています。