院長の独り言
Monologue

2019.1.31

ポジティブ、ネガティブのバランス

戦国武将の中で最もポジティブに生きたのは豊臣秀吉であると思われます。一方で最もネガティブな考え方を持っていたのは徳川家康であったと思われます。秀吉は百姓のせがれから織田信長に引き立てられて、運も味方して天下をとったのでポジティブにふるまわないと出世は難しかったと思われるので、天下統一という時代の要請に生き方がマッチしたのでしょう。家来に領土などの恩賞を与えることによって言うことを聞かせてきたので、晩年まで朝鮮に出兵して失敗してしまったのは自然の摂理なのでしょう。家康は人を信じないネガティブな性格であったために、自分の死後も大名が裏切れないように出来る限りの政策を行っています。これも秀吉が統一した日本を戦乱の世に戻すことのないようにする時代の要望があったのでしょう。
 今の時代はどんな時代なのでしょうか。ポジティブな考えのみで暮らしていくのも少し危険と思われますし、ネガティブな考えのみでは人も寄ってこないし、組織は衰退するばかりなのでしょう。
 ではどうすれば良くて、どうすることを時代は要求しているのでしょうか。この命題はとても難しくて、今の時代はポジティブな考えもネガティブな考えも両方必要とされる時代ではないかと考えます。攻め時は攻めないと時代に遅れをとってしまうし、きちんとガバナンスを守っていくネガティブな思考も大切なのです。
 今こそリーダーの資質が問われる時代はないと考えます。リーダーによってその組織は悪くも良くもなっていくのです。さて、そのリーダーシップはどうやって養っていくのでしょうか。私は31歳と若い時期に公的病院の院長を経験させてもらったお陰で、リーダーとしての判断する場面を多く経験させてもらって、私が下した判断が正しかったのか間違っていたのかは別として緊迫した場面での判断力を身に着けることが出来ました。ここは攻め時守り時をなるべく正確に判断できるように常に考えて暮らしていければ、、どんなに小さな組織で生きていても自然と判断力は身につくものです。また歴史は繰り返しますので、過去の歴史上の人物を研究しても良いかもしれません。
 私がライフワークにしている漢方の考えも攻める漢方と守る漢方があり、それぞれの最適な処方をした時に初めて効果を発揮してくれます。漢方では陰陽という冷えと熱のどにらに患者さんが近いかの判定をして処方していきますが、この判定が極めて難しく長い年月の経験を要します。最近わかったことは、患者さんの長年苦しんできた症状から漢方薬で解放してあげた時には、その人の人生の軸のゆがみをとったかの様な感覚を味わうことがあります。
 漢方の世界だけでなくて、全ての事象において陰陽のバランス、ネガティブとポジティブのバランス感覚を養っていく人が、近代社会での勝利者になるのではないでしょうか。。そのためには特別なことは必要なくて、その人が生きている実社会がよい修行の場となるのではないでしょうか。