院長の独り言
Monologue

2018.7.31

災害と日本人の平等感覚

西日本の大雨による水害は日本列島に多大な爪痕を残してしまいました。いつも日本人は災害に合った地域に迅速にボランテイアを出したり、義援金を送ったりして、天災による被害に対してはとても優しい対応をします。それは日本人が農耕民族でみんなで協力しないと村を維持できなかったことに起因しているようです。
 私は実際に45年前の昭和47年の西日本の大水害の時に江の川という大きな川の堤防が決壊して、夜8時ころに道が川の様に激流となっている中を家族4人で父親にしがみついて逃げた経験があります。家の近くに小学校があって建物が高くなっていてそこにたどり着いた時は、死ぬところだったと心から続々とその家に集まってきて2~3週間の間、数十人で共同生活が始まりました。道も鉄道も崩れて閉鎖されていたために毎日ヘリコプターでおにぎりが運ばれてきて、それを食べて生き延びました。そこでの共同生活は大変不便ではありましたが、中学1年生であった私にとってとても勉強になりました。災害で不幸な目に合ったらみんなで助け合うこと、悲しまず嘆かずに前を向いて生きていくことの大切さなどです。我が家は土建会社を経営していて、家も1年前に新築したばかりでした。水が引くと同時に浸かった家の泥の除去作業を従業員と共に父親がやっていました。建設資材も流されて建設機械も使用不能になったはずで痛手であったはずなのですが、父は喜々として働いていました。
 被災してしばらくしてから、大型の工事の発注が次々にあって土木を基幹産業にしていた地域が大変潤ってきました。あの被災直後に父が大変明るかったのはこのことかと後で気が付きました。
 日本は世界に類を見ない災害の多い国で、過去の歴史を振り返っても人々は災害との戦いに明け暮れています。やっと日常の生活に戻ったと思ったら別の地域がやられて、人々はいつの日か連帯意識を持つようになってみんなで協力して災害に打ち勝ってきました。日本は人々の心根が優しく、安全でとても住
みやすい国ですが、災害が多いことだけが欠点であるかもしれません。今後も災害は繰り返すと思われますので、我々は過去の歴史を検証しながら災害時の避難のタイミングや避難方法など細かい取り決めを作ることが大切であると思われます。
 一方で日本人は平等意識が強くて誰かが抜きんでて伸びていくことや誰かが良い思いをしていることにとても敏感に反応して怒ります。ずるをして得をした人や不倫の様に社会的な規範を破ったものや偶然に努力もせずに富を得たものなどへの反発はとても強く、最近では特にマスコミの誘導もあってこんなことで大騒ぎする暇があったら北朝鮮や中国、アメリカとの関係や貿易などもっと大切な議論があるでしょうにと思うことがあります。芸能人や政治家の不倫など昔ではあまり叩けれなかったことがワイドナショーで連日取り上げられます。もちろん本人たちが悪いことをしているのですが、あそこまでやらなくても社会的な制裁を充分に受けているであろうにと思うことはあります。
 今の日本人の状態は、農耕民族であるが故の災害時の助け合いなどの平等性に加えて、欧米化させた人権意識の高まりによるバッシングが加わった状態ではないかと私は考えます。
 武士の情けという言葉があるように人にあまり迷惑をかけてないような人の過ちには、あまり目くじらを立てて非難しないでもう少し大らかに対処する懐の深さも現代人に必要な気がします。がみがみ言う人に限って自分が同じ立場に立ったら同じことをするような気がします。自分が出来なかったからこそ悔しくて非難するのではないでしょうか。
 自分は自分、他人は他人と割り切って自分の信じた道を突き進むこと、これこそが昔の武士道の精神を身に着けた侍なのではないでしょうか。武士とは普段は大人しくて他人のことを批判せずにいて、いざ家族や周囲を守らなくては行けない時に命を懸けて守れる人のことを言うのではないでしょうか。また、他人のために一生懸命に行動できる人のことではないでしょうか。もし、そんな人が周囲にいたら変な誹謗中傷で傷をつけないで欲しいと願っています。