院長の独り言
Monologue

2018.4.30

これから毎日同じように無心で生きていきたい

私も来年には還暦を迎える年齢になってきました。還暦は十二支十干の60通りが一回りして新しい人生をもう一度歩むという意味です。
 今まで無我夢中に失敗を恐れずに思い切り背伸びをして走ってきました。そのお陰であらゆる事象が修行の場となって自分の地力をつけることができたような気がします。
 学んだことは勝ち戦の時と負け戦の時の自らの心境の違いです。勝ちたいと思った時には良い結果が出ることはなく、負けを覚悟に無心に頑張った時に良い結果が出たように思います。
 上手くいっている時ほど注意深さが必要であり、逆風の時には自ずとどこからともなくパワーが沸いてきて難局を乗り切ることができました。
 さて、これから人生が一回りしてどのように過ごせばよいのか少し考えてみました。これから新しいことをやり抜く体力は残っていません。自ずと60年間生きてきた人生の延長線上を歩んで行くしか道はなさそうです。
 私はこう考えました。これからもっと成功したいとかもっとお金を儲けたいとかもっと人の役に立ちたいとか、もっともっとの野望はまずは捨てようと思っています。多くの歴史上の人物がさらなる高みを望んで晩節を汚したことはよく知られています。豊臣秀吉、西郷隆盛など名だたる人たちがそうなっています。
 その組織にしがみついて老害と呼ばれるようになってきて、実力者であるが故に注進するものがいなくて本人は大変良い気でいるのです。あなたの傍にもいるのではないでしょうか。私はそんな晩年だけは過ごしたくありません。
 ではどのような気持ちで過ごせば老害と呼ばれなくて済むのか考えてみました。毎日毎日を平凡に同じように過ごして行くのです。雪が解けて春になれば桃の花が咲き、さらに梅の花が咲きアレルギー性鼻炎の患者さんが来院して、、桜が満開になって散っていく。その後藤の花が咲き、チューリップの花で田圃が一杯になるころには精神を病んだ患者さんが訪れ、田植えが終わり梅雨になるころからアトピー性皮膚炎の患者さんが増えてきて、真夏になれば夏バテや脱水で倒れる患者さんで点滴室が一杯になり、秋の気配が近づいてくると健康診断の最終駆け込みが沢山来るようになります。そして10月からインフルエンザの予防注射が始まって、冬が到来すると本格的なインフルエンザの流行が始まってくると同時に、昼間が短くなるが故のうつ状態が増えて来ます。私自身も12月には軽いうつ状態になります。年が明けて雪が沢山降って患者さんが激減します。そこを耐えるとまた春がきます。
 開業して19年以上のように全く同じリズムで過ごしてきました。有難いことに職員もほぼ変わることなく、同じメンバーで約15人の職員の赤ちゃんが誕生しました。
 私はこれからも平凡に毎日毎日同じように「無心」で過ごして行けることが大切だと考えています。そう出来ることによって、私自身が生きていけることのありがたさを噛みしめ、患者さんや職員への感謝の気持ちを強く持つことができるのだと思います。