院長の独り言
Monologue

2018.3.31

少数意見に耳を傾ける

最近ではいじめがスマホによる仲間外れや陰口など精神的なダメージを与えるものが多くなってたちが悪くなって来ています。同級生や先生がいじめだとわかっていても見てみぬふりをするケースも見受けられます。
 先日貴乃花が年寄り会でその他の親方99人からつるし上げられていました。そのニュースを見て昔の戦争前の日本を連想したのは私だけでしょうか。貴乃花は自分の弟子が同じ部屋の弟子に暴力をふるったので世間に謝罪をして休場させました。自分が協会に逆らっていたので弟子の監督が不十分であったために反省したのでしょう。しかし、その前の日馬富士事件の協会の対応に不満を持ったので内閣府に告発状を出して、無断でテレビにも出ました。そのことの善悪の決着はついてないまま告発状を取り下げました。それは弟子を守るという意味では間違いはないと思います。
 問題なのは協会に逆らった意見が間違っているのかいないのかを検証する前に一方的に貴乃花が悪いのだと決めつけてみんなで総攻撃をかけたことなのです。確かに日馬富士の事件を協会に報告しなかったりしたのは彼のミスです。でもことの本質はそこではなくて協会の暴力をもみ消そうとした体質にあるのです。今回は自分の弟子が加害者であり被害者でもあるのですが、彼の反省した行動はゴルフクラブで弟子を殴ったり、同じく自分の弟子同士での傷害事件をもみ消そうとした親方よりはずっとたちの良いものです。それをこの時ばかりと1対99で多勢で攻め立てるのは子供のいじめに相当するような場面です。
 日本人は外国から見て礼儀正しく、決められたことは守ると言われていますが、大衆心理が一斉に一方向に突進することがあります。その最も大きな出来事が戦争の前後です。戦争前から戦時中は戦争に異議を唱える思想を持つものを徹底的に非国民扱いをして投獄しました。今度は戦争が終わるとA級戦犯だけが悪いかの如く扱われています。その時の流行の思想に流されて、本質を見抜いて意見を言う力がないのです。財界や政界などで神扱いされる人が出てきて、その人が右といえば右になってくるのです。権力の座に長くついてしまうと多くの日本人は錯覚を起こして自分の意見が 100% 正しいと考えてしまうのです。一人の人間が善悪を決める世界は長く続かないことを歴史が証明しています。
 私の実家の土建会社の倒産の前後でも経験しましたが、いくら社会に貢献していた会社でも倒れてしまうと地域の人々はなぜか一斉に非難を浴びせて、仲間外れにします。私は仕事上患者さんの会社が倒産した際には言ってあげます。「あなたは商売上の取引先には迷惑をかけたかもしてないが、世間の人には何も迷惑をかけていないのだから堂々と生きていきなさい」と
 また私は日々の診療の中でそんなことはあり得ないという言葉だけは使わないようにしています。医学の世界では診断の正確さや治療の有効性は必ず結果として出てきます。人間の体は嘘をつかないのです。もちろん現代の医学では治せないことは沢山あり、診断がつかない症状もあります。その時に一番頼りになるのが患者さんの治った治らないの判断なのです。患者さんの意見が一番正しいのです。この真実を求めていけば例え貴乃花の様な少数意見であっても、それが正しいなら自分の敗北を素直に認めて次の診療に役立てる努力の積み重ねが優秀な医師を育ててくれるように思います。
 あなたの働いている会社や家庭ではどうですか。少数意見でも取り上げて検討してくれますか。あなたは部下に対して意見を聞かずに自分の考えを押し付けていませんか。もし心当たりがあるならば、急に貴乃花の様に強行しては失敗しますが、徐々に組織を変えてみませんか。これから日本は人口減少と労働力不足に陥っていきます。その時には社員が一丸とならなければ乗り切れませんよ。