院長の独り言
Monologue

2018.2.28

失敗力から見たオリンピック

先日、佐藤智恵さんというエッセイ作家と知り合いになりました。東京大学を卒業後NHKに入社してデイレクターをして退社してコロンビア経営大学院でMBAを取得されてコンサルタントとして独立されています。テレビにも時々出演されていて、「ハーバートでいちばん人気の国日本」というPHP新書から出ている本は15万部を売ったベストセラーになっています。
 もう一冊読んで欲しい世界のエリートの「失敗力」という本で、ハーバートやスタンフォード大学院の入試では学力と共に必ず過去にどのような失敗を犯してどうやって克服したかを問う論文が出題されるようです。つまり世界の企業は単なるエリートではなくて、ピンチの際に冷静に力を発揮できる人間を求めています。日本のトヨタを始めとする一流企業もその傾向にあるようです。
 私の短い人生を振り返っても、現在役に立っている感覚は若いころあるいは雇われ院長の時代、開業当初の若気の至りなど多くの失敗から学んだものが一番です。
 東京大学は解答がわかっていることを教えるが、ハーバート大学は解答が出てないことを皆で議論してどうやったら正解に近づくかを教える大学と言われています。もちろん企業はハーバート大学で学んだ人間を好みますが、日本も捨てたものではなくて佐藤智恵さんも述べていますが、外国人から見ると日本人には大変素晴らしいところがあり、日本史においても大切な教材が転がっているとのことなのです。
 人間は必ず失敗をします。その時は成功したと思っていても後の結果で失敗したなと反省することは多々あります。反省して次には失敗しないようにと考える人間は謙虚であり、必ず成功への道が開けてくるものです。自分の失敗を他人に押し付けたり、失敗に気が付かない人には進歩という文字はありません。そんな人はいくら学歴が高くても、地位や名誉があっても徐々にすたれてきます。
ハーバートではそのことにいち早く気が付いて、世界のリーダーを育てていくカリキュラムを組んでいるのです。
 話が変わって冬季オリンピックが終わり、日本勢では多くのメダルを取ることに成功しています。その中で失敗力から立ち上がったアスリートを指摘したいと思います。一人は日本が誇る羽生結弦さんで、言わずと知れた11月に足首の靭帯を損傷して歩くこともできない状態から徐々にリハビリを行って、やっとジャンプが飛べるようになったのが平昌についてからというから驚きです。自分が犯した失敗からけがをして、そこからただひたすらオリンピックで金メダルをとるためにリハビリ、メンタルの維持、イメージトレーニングはみごとという他はありません。さらに演技構成も今自分ができる最大限のジャンプで決して無理をせずに、でも出来ることは全てやる。4年前に金メダルを取るには取りましたが、フリーで転倒もしたりして不完全燃焼なものであったのが、今回は歴史に残る戦いをしたのは見事という他はありません。
 失敗は誰にもあり、そこから勝つためにどのようなメンタルでどのようにスケジュールをこなしていくかは、多くの企業でも参考になる事例です。
 もう一人スピードスケートの小平奈緒さんです。彼女は31歳ですでに選手としてのピークは過ぎています。若いころから期待されても全く結果がついてこないので、単身でオランダに留学して向こうの選手以上の練習をして、さらに大舞台で活躍できるメンタルも身に着けて帰ってきました。ワールドカップで負けなして、本番のオリンピックでも十分に力を発揮することができました。負け続けている時に自分に足りないものは何かを考えて、身体能力とメンタルの弱さであると考えて、そこを補うには本場のオランダに行って一流選手と一緒に練習をした上で自分の力を補う作戦に出たのが功を奏しました。
 世界で活躍する人は必ず良く考えて行動をしているということがよく分かります。我々多くの人間は世界では活躍できませんが、毎日毎日襲ってくるピンチや圧力にどうやったら打ち勝つことができるのか考えて考えて行動する連続において、成功への道が開けてくるのではと考えます。ピンチよ来い、どうやってお前を料理するのか楽しみでたまらないと考えることができた時に初めてその世界の巧みになれるのではないでしょうか。