歴史は繰り返す
私達は小学校から高校まで歴史を習って来ました。どうして歴史を学ぶのかというと、歴史は繰り返すからなのです。過去に日本人が犯した過ち、良かったこと、人間の罪なところ、あるいはその一族での歴史は繰り返しているから、その過去を知って学習して行けば少しは未来が予想出来て、多少なりともその人の人生が良い方向に向かうからなのです。
人類は戦争を繰り返して来ました。過去の戦争がどうして引き起こされて来たかを知れば、多少なりともそれを防ぐことが出来るかもしれませんが、人類の遺伝子は少しづつでないと変異していかないので、過去の歴史を繰り返すことが多いのです。
北朝鮮情勢が厳しくなって来ていますが、そのことは我々の力ではどうしようもない部分が多いと思いますが、一個人の歴史について考える事は出来ます。
いつも診察の時に思うのですが、同じ患者さんに同じ話をしてしまうし、患者さんも私に同じ冗談を言ったりします。これはどこにメモしていなくても同じ結果になります。また、当院では初診時に100項目の調査票を記入してもらいますが、1年後にやってもらってもほとんど同じ結果になります。また、親子や兄弟で肥満の患者さんが来院されて治療した時に、ほぼ同じ結果となることが多いのです。
歴史は国単位の大きなくくりでも繰り返しますが、個人個人でも繰り返して行くので、自分の人生を常に振り返って見ることが大切です。子供の頃いたずら好きだった人は大人になっても心の何処かにいたずら心が潜んでいますし、真面目であった人は大人になっても真面目です。言い換えれば大人になっても性格はほとんど変わらないのです。教師になれば教師なりの仕事はするし、医師になればそれなりに働きますが、子供の頃の性格の根っこは何も変わることはありません。何か新しいものを追求するのが好きであった人は、いくつになっても探究心を持ち続けます。嘘ばかりついて来た人は死ぬまで嘘をつきます。
ですから、小学校中学校高校でどのような生活をしたかを思い出して見れば、今後の自らの生活の未来予想図は見えてきます。では人の運命は全く変えることが出来ないのでしょうか。それは違います。人の遺伝子は変える事は出来ませんが、運命は変えることが出来ます。
配偶者がいる人は、パートナーのアドバイスをよく聞くことが出来れば自分の運命を変えることが出来ます。ですがそのパートナーが出来れば自分と大きく異なった性格を持っていることが前提になります。同じような遺伝子を持っている親兄弟のアドバイスは同じ方向を向いていて、ベクトルの向きを変えることは出来ません。勿論、世間のためになっていることをしているのであれば、さらにそのベクトルは強力になるので良いのですが、悪い方向に向いている時は自分の一族の意見は無視したほうが良いのです。結婚を全く異なった遺伝子を入れていくことで生まれた子供はより洗練された人間になって行くであろうし、子供がいなくてもパートナーがいれば、世の中で唯一辛口のアドバイスをしてくれます。私が今日あるのは、常に私に批判してくれる妻のお陰と思っています。母親は私と同じ遺伝子を持っているので、私が何をしても肯定的です。しかし、妻は世間の人達から見てあなたはこうだから気をつけろとか、とにかく厳しい目で私を見てくれます。言われた瞬間はムカッとしますが、いつも妻の言うことが的を得ています。逆に妻がおかしい時は私も多少は言わしてもらうこともあります。
私は島根の石見の出身で妻は出雲の出身なので、その辺の大きな違いもお互いの意見を聞くことでより中庸に向かって行きます。
人の遺伝子からもたらされる良い運命はそのまま伸ばして行けば良くて、悪い運命は全く性格が違うパートナーを持って、その人の意見をよく聞くことで唯一変えることが出来ます。パートナーに限らず職場組織においても人の話に耳を傾けることがいかに大切なことであるのか、私は日々多くの患者さんを診ていく中で気が付きました。ソクラテスが「悪妻を持つと哲学者になることができる」と言いましたが、ソクラテスのいう悪妻とは自分に意見する妻という意味ではないでしょうか。