院長の独り言
Monologue

2017.8.31

虚栄心を捨てて中庸で生きてみませんか

ここ数年肥満症の患者さんを漢方薬も利用して食事指導も行って治しています。お陰様で全国から来院されるのですが、そのそれぞれの個性が大変興味深いものがあります。私の基準は最初の1ヶ月で最低1kgの減量を合格とします。ほとんどの患者さんは最初の1ヶ月で3~4k痩せて、100k位ある人は8k位痩せてきます。2回目の再診がとてもおもしろくて、4k痩せたのにもう少し減っていた時があったのにと悔しがる人もいれば、1kしか痩せてないのに最低の60点の合格と開き直る人もいます。実に楽しい外来で、私自身人間の性格を考察するのに大変勉強になっています。
  十分に減量しているのにまだまだと追求する人は実に苦しそうです。反対にもう少し頑張って欲しいのにと思う人が、5k位減ってそこらで満足して適当に病気と付き合っていく人はこちらも実に気が楽になります。
 どちらが良いとかではないのですが、その人に備わっている性格なのでどうしようもないのです。前者の次々と前を向いて生きて行く人は何をするにも人に負けたくない、人によく思われたいという虚栄心や名誉心が生きていくエネルギーにもなり、その人を苦しめることになります。
  かつての私も人に負けたくないとの名誉心をエネルギーにして頑張って来たのですが、頑張っても頑張っても上には上がいて切りがありません。そこで自分自身が大変苦しくなって、自分自身を否定してしまうようになってきました。そこで、私は人と競争することをやめました。ゴルフをする時もなるべく競争にならないような人とプレーをし、仕事においてもなるべく人との比較にならない世界で、自分の腕を磨き、他業種の人となるべく付き合い、毎月千葉の師匠の所に行くついでに東京で羽を伸ばして、あたかも医者でないような感覚に自分をもっていくようにしました。生来の負けず嫌いの性格の遺伝子はそのままなのですが、その方向を変えてなるべく競争のない世界に身を投じることで、自分自身の寿命が伸びてきているように感じています。
  あの時もっと頑張っていればもっと良い人生が送れたのにと考えることは誰にでもあると思いますが、もしあの時に戻っても、同じ事をしていたと思います。つまり人間は環境の要素は別として、その人の持っている性格や能力は変わるものではなくて、なるようになって必然的に今があるということです。
  成功も失敗もあまり大したことではなくて、成功したところで上には上がいて満足が味わえなくなるし、失敗しても人生が終わったりこの世が終わったりすることはないのです。30年前に実家の建設会社が倒産した時もダメージは大きかったのですがなるようになったし、現在人から見れば成功している様に思える私自身も特に満足度が高い訳でもなく、ただ毎日病気を見逃すまい患者さんの笑顔が見たいその一心で働いています。そのことは毎日叱られていた研修医の時代もお金が無かった新婚時代も全く変わらない心境なのです。その頃と違うのは高級外車に乗れる様になったことと、いろいろな物が自由に買えるようになったくらいであり、別に大きな車に乗らなくても贅沢品が買えなくても、生きて行く上では何も変わった事はなく、問題は虚栄心や名誉心が満たされているかどうかだけの問題だけなのです。一度裸になった経験がある自分からすると、生きてさえ行ければ虚栄心などというつまらない感情は何時でも捨てられるということなのです。
 人が生きて行く上で虚栄心ほど邪魔になるものはないと私は考えています。持って生まれた負けず嫌いの魂は心の中にしまっておいて、虚栄心を捨てて70~80点の中庸を目指してみませんか。その方が多くの人が気楽に寄ってきてくれて多くの友人が出来て、もっともっと楽しい有意義な人生になると思いますよ。誰でも人間である限り失敗は必ずします。その時の大きな助けになってくれると思います。大波の人生を歩んだ私が言うのですから間違いはありません。私自身も残りの人生がこのまま上手く行くとは考えていません。一寸先は闇も来るかもしれないと思って暮らしています。例え闇が来ても必ず中庸の精神で乗り越える自信はあります。