院長の独り言
Monologue

2016.11.30

広島カープ(広島市民)はすごい

今年の私自身のトピックスは広島カープの25年ぶりの優勝です。巨人やソフトバンク、阪神が都会の大企業と考えるとカープは地方の貧乏な中小企業です。その中小企業がお金をかけずに大企業に勝ったのですから、こんなに痛快なことはありません。日本一に輝いた日本ハムも北海道の地方企業でお金をかけないので有名です。
  以前にあった広島市民球場は1957年にほとんど広島のマツダ、中国電力広島銀行、広島電鉄、中国新聞などの財界からの寄付で建てられていました。その老朽化が進んで観客も減ってとても優勝できる雰囲気ではありませんでした。他球団に移籍できる権利(FA)を得た選手は年俸が高いためにカープはFAを宣言した選手を引き止めずに快く他球団に送り出して、若い選手を鍛えてレギュラーにしていきます。2006年9月に黒田博樹がFAの権利を得ていて大リーグに行こうと思っていて最後の登板となると思っていた時に、観客が総立ちとなり「我々は君とともに戦ってきた。今までもこれからも   未来へ輝くその日まで 君が涙を流すなら 君の涙になってやる カープのエース 黒田博樹」という横断幕が掲げられていました。
  黒田はほぼ大リーグに行くことを決めていましたが、その次のシーズンはカープに残って、その翌年にFAを行使して大リーグに渡りました。その年に4番打者の新井も阪神にFAで移籍しました。二人の年俸がカープの選手全体の25%を占めることを考えれば仕方のないことでありました。
  その後老朽化した広島市民球場の建て替えを市民は望みましたが、広島県も広島市も乗り気ではありませんでした。でも広島市民が樽募金をはじめて1年で1億2500万の球場新築への願いの募金が集まって、やっと広島市や財界も本気になって現在のマツダスタジアムが完成したのです。市民と財界からの寄付が18億円集まったそうです。広島カープはまさにオーナーが市民であり、市民の魂が込められている球団なのです。
  マツダスタジアムが完成してからは観客も増えて来て、球団経営も実に順調で年俸の高い黒田を受け入れる態勢が整ったのです。 2年前に大リーグでの20億円の年俸を蹴って、広島カープと4億円で契約して帰ってきて「男気」黒田博樹が代名詞になったのはご存知の通りです。阪神で出番のなかった新井も一緒に帰って来て、今年の優勝につながりました。
  黒田博樹は男気があるだけでなく、とても賢い選手だと私は思います。広島での振る舞いも、大リーグでのプレーもそうなのですが、今ここで自分が何をしなければいけないかを良く理解している人間なのだと思います。プロ野球の選手は自分が何かをしたいという欲求で行動する選手がほとんどなのですが、黒田は自分の使命を良く理解して行動ができるのです。だから20億の年俸を捨てて最後はカープでとのファンとの約束を果たすために戻って来たのです。
  日本シリーズで先発して6回足がつった場面で、一度ベンチに戻って再びマウンドに戻って投球練習をはじめました。とても投げられる状態ではなくて交代しましたが、、選手の士気を高めるために行ったデモンストレーションだったのだと思います。残念ながら接戦でこの試合は負けましたが、自分が今できることを最大限する。これが黒田の生き方ののではないでしょうか
   医療においても特にそうなのですが、自分のやりたいと思っている研究や診療などはあまり上手く行かないことがほとんどです。そうではなくて、医師が自分の能力自分の環境を考慮して、今自分がしなくてはいけないことを行うことの出来る人は、光り輝いていて人にも頼りにされて、やがて自分のやりたいことにたどり着くのだと思います。私は夢を語ったり考えるのがあまり好きではありません。考えたところで上手く行くことはほとんどないからです。そうではなくて身の丈に合った現在での自分の使命を果たすこと、これこそが潜在的にある自分の夢に近づく近道ではないかと考えます。
  もう一つ、選手の年俸の総額が40億円の阪神、巨人、ソフトバンクに25億円のカープや日本ハムが勝ったこと、さらに年俸の高い選手を出して安い選手を獲得して日々練習をさせて一流の選手に仕立てあげること、これこそがお金や人がなくて過疎化が進んでいる地方が、広島に学ぶべき点だと考えます。
  広島市民にとってカープは生活の一部であり、その他にもサッカーのサンフレッチェも強く、マツダはトヨタに対抗して独自のエンジンを開発して頑張っています。全国展開しているパンのアンデルセンは広島が発祥で、冷凍技術を開発してどこでも美味しいパンが食べれれる様にしました。カルビーも広島が発祥で、お菓子と朝食で先陣を切っています。広島県人は都会にこびずに独立独歩で頑張る気質なのです。
  黒田博樹、広島カープ、広島気質、大いに参考になると考えて巨人ファンである私が皆さんにご紹介しました。