出雲高校野球部甲子園出場に関する考察
出雲高校野球部が島根県大会で優勝して甲子園に行くことになりました。出雲高校は私の母校ではありませんが、妻と長男長女の母校です。県外の方はお知りにならないと思いますので説明すると、県内で松江北と1,2位を争う進学校で東大をはじめとする帝大や医学部に多数合格者を出す学校です。ほとんどの生徒が国立大学に進学します。
その出雲高校が甲子園に行けるのは、野球部創部以来初めてのことであり、今後もあるかどうかわからないほどの奇跡的な出来事です。
娘が在学中に私はPTAの副会長をしていましたが、甲子園に行くための基金をためていましたが、役員の誰もがいつ行けるともわからない基金を貯める意味があるのかと思っていました。
勉強で出雲高校のライバルが松江北高校であり、私の母校でもありますが、北高は文武両道を校風としていて、総体での総合点数は毎年1位ですが、過去に甲子園の出場は古い松江中学時代には何度かあり、近年では10数年前にあり、その時に寄付が3億集まったと言われています。
北高は勉強の出来る生徒は徹底して勉強をして、運動の出来る生徒は徹底して運動をする傾向にあり、結構勉強系と運動系と別れている傾向が昔からあります。
出雲高校は勉強の出来る生徒と出来ない生徒の差が北高に比べて小さくて、みんなが仲が良い様に感じます。その違いは松江市に進学校が学区で3つに分かれているのに、出雲市は出雲高校に集中することがあるのですが、そればかりではないように両校を知っている私は思います。それは松江市は城下町で特に北高の区域はお城のまわりで、武士の身分制度の感覚が残っているように思います。出雲市は元々農村で平等や横並びの文化で、出る杭は打たれるので、才能がある人もみんなと仲良くして仲間はずれにされないようにする文化が残っているように思います。どちらが良い悪いではなく、江戸の頃から続く住民の精神は何百年経過しても代々引き継がれていくものなのだと思います。
さて、それで出雲高校野球部の話にやっと移りますが、このチームが勝ってきた最大の要因は、レギュラーみんなが同じような打撃力と守備力を持っていて、抜きん出た生徒がいなくて、みんなが快くバントをしたりして自己犠牲の精神でフォアザチームに徹することが出来たことです。これが私立の強豪校や大社高校のような明らかに出雲高校よりも打撃力は上のチームに出来なかったことなのです。準決勝も決勝も出雲高校は走ったり、バントを決めたり、コツコツと1点1点を取りに行って、最後に無欲で勝つことが出来たのです。
石見地方の大田出身のキャプテンが最後に挨拶で、自分は一度も公式戦に出場をしたことがありませんが、自分の役割は挨拶や礼儀をきちんとして、みんながやる気になるように勤めることであると言っていました。試合後にたまたま当院に風邪で来院した部員が、このキャプテンのお陰でみんながまとまっていると言っていましたが、本当に素晴らしく生徒です。この生徒は理数科に所属していて成績も良いのではないかと考えられます。
また先程から言っているように、出雲は農村文化で平等横並びの精神が根付いていますから、ベンチにいる子もスタンドで応援するしか出来ない部員もみんなが一つになりやすいのではないかと推察します。日本最大のパワースポットである出雲大社もあり、何百年もの間大きな災害もなく過ごしている住民にとって、大きな変革をしなくても豊かな土地や文化を継承していけるので、自己犠牲をはらってでも平等に一つの目標に向かって行くことを好む住民性なのです。ですからこの度の出雲高校野球部の活躍は、出雲市民にとって自分たちが肯定された喜びであり、自分たちのやっと掴んだ勝利でもあるのです。
島根県には石見地方という最も過疎化が進んでいて、松江や出雲と全く違う広島や山口に近い住民性を持っている地方があり、そこで生まれ育ち高校は松江北に行って3つの地域の良い所も悪いところも知っている私が、今回の出雲高校野球部の甲子園出場に関して考察を加えて見ました。
郷に入れば郷に従えという言葉があります。どこの出身であってもその地域で暮らす限りは、その地域の暗黙のルールがあります。このルールを知るのにかなりの労力を要します。一生かけても理解できない部分も沢山あります。こんな島根のような小さな地域でも松江人、出雲人、石見人、隠岐の人と言ってお互いを認め合わない部分も沢山ありますが、今後は I ターンや外国からの移民も増えて来るでしょう。同じ人間なのですから差別せずに、暗黙のルールがわからない人にも親切に接してあげることを望みます。
出雲に25年暮らしていても、今だに出雲の暗黙のルールは妻に教えてもらわないとわからないことが沢山あります。私もいろいろな人から陰口を言われていることは理解しています。人間の悲しいサガを度々知ってしまう毎日です。それでも、少しでも自分を理解してくださる人達のために一生懸命に生きていかなくてはなりません。
みなさんも、自分の地域や職場や組織で行き詰った時に、他の地域や組織を見に行ってください。その時に自分の組織の良い所と悪い所が良くわかります。そして今まで文句ばかり言っていて何の解決も出来なかった自分が、取るべき行動が見えてきますよ。