院長の独り言
Monologue

2016.3.31

地味だけど大切な仕事

日本学士会のアカデミア賞という賞があり、過去には日野原重明先生や国連の明石さん、千宗室さん、王毅(日本大使時代)など文化や国際交流に貢献した人を受賞するものでありますが、この賞を私の師匠である小林祥泰先生が受賞されました。日本でいち早く脳ドックを手がけて長年にわたって多くのデータを蓄積して健康長寿に貢献したことが認められたものであります。
  このデータから多くの論文が生まれ、多くの博士が誕生しているのであります。やってきたことはかなり地味で、MRIを施行して脳機能に関係する検査や大脳の高次機能の評価を長年続けて来ている訳であります。
 現在も山口修平教授に変わって、何万という人の脳ドックの評価がどんどんと蓄積されています。
  この長年にわたる正確な嘘のないデータの蓄積は本当に大切で、人間がどの様な生活をして、どんな病気や症状に気をつければ健康な脳機能が維持出来るかということが分かってきます。
 科学への取り組みには2つのやり方があって、一つはノーベル賞を受賞するような画期的な発見と、今回の脳ドックの蓄積の様に地味ではあるけれども長い時間をかけて集めたデータなので嘘がなく、すぐに社会生活に役に立つものがあります。
  小林先生の下についていて感じていたことは、地味ではあるがどんな研究もずっと続けていく地道な努力が凄いということです。教授になるような人はある程度のひらめきは持っていて、まあまあ才能があるのでしょうが地味な仕事をずっと続け切る人はめったにいません。その稀有な存在が小林祥泰先生なのだと思います。 
  スポーツ界では、野球で言うと、42歳過ぎてもまだ大リーグで頑張っているイチロー、50歳まで先発で頑張り続けた元中日の山本昌、日本のサッカーの礎を築いてワールドカップに一度も出場出来ずにいるのに今なお49歳で頑張っている三浦知良、レジェンドと言われているジャンプの葛西紀明など、多くの日本人が地味ではあるけれども頑張って現役を続けています。
 色々な意見はあるでしょう。ノーベル賞や華やかなホームランを量産する選手や大リーグで年間何十億ももらう選手に比べたら、あまり面白みが無くてつまらなく思う人もいることでしょう。しかしながら、華々しい人は遺伝的に特別に恵まれた人が何かの運に恵まれてこの地位にいる人が大半であるように思えます。反面地味に長年頑張る人は、普通より少しだけ素質があって多大な努力で成果をあげているわけでありまして、私は地味な努力を好みます。
  もちろん、ノーベル賞学者も多大な努力を重ねていることに変わりはありませんが、我々一般人から見ると遠くの存在に感じる訳であります。
  さて、自分の実生活に置き換えて見ましょう。かつて見た夢も徐々に小さくなって来ていて、これから先の希望もさしてなく、ただ漫然と過ごしていませんか。
  私自身は変化を好む性格なので、自分の逃げ道を塞いで毎日毎日踏ん張って仕事をしています。毎日毎日同じことをすることの大変さが身にしみています。木曜と日曜日の休みの日が楽しみでしょうがないです。どこまでやれるかわかりませんが、働ける限り頑張ってみようと考えています。
  みなさんも自分の現在の生活や与えられた仕事を一生懸命にやり切って、さらにやり続けて行って、その世界で一流と呼ばれる人になってみませんか。地味ではあるけれども毎日続けて行くことがどんなに大切なことであるか認識してみませんか。そうなってきた時に初めて別の素晴らしい世界があなたを待っている様な気がします。その世界は自分で探して見ましょう。