院長の独り言
Monologue

2015.1.29

青山学院駅伝部の組織作り。

今年も正月は恒例の箱根駅伝を見て始まりました。今年は何と言っても青学の初優勝の話につきます。戦前の予想では駒澤が優勝候補の筆頭で青学は2位か3位の予想が多かったのではないかと思います。優勝後の監督のインタビューでも今年は勝つつもりがなく、来年は間違いなく優勝できるチームになると思っていて予想外の優勝だったようです。
 実はこの監督の予想外の優勝であったというコメントの中に、今年の青学の強さがあったのだと思います。また、常々私も含めて多くの人びとが箱根駅伝に関係した学生は社会に出て活躍出来る確率が高いと言われていて、実際に控えの選手やマネージャーも含めて就職戦線では引っ張りだことということですが、今回の大会では逆のパターンもあるのだなと思いました。つまり青学の原晋監督が営業マンとして一流の活躍をしていて、高校時代に走っていた駅伝の世界に急に入って約10年で今回の優勝を果たしたということなのですが、駅伝とは全く関係のない中国電力の営業でトップセールスであったことが、そのノウハウをスポーツの指導に応用できて箱根駅伝でトップに立てたということで、一つの世界で勝ちパターンを持っていると他の世界でも勝てる可能性が高いということが証明されました。
 原監督はオール電化住宅の促進営業で成功したように、まずは目標を短期、中期、長期で立てて、目標管理をしながら達成率を確認しながら進めて行く方法で学生たちを指導したようです。一律に指導するのではなくて、それぞれの目標を自分で立てさせて自分で管理させて、達成率を自分でチェックさせながら、自分自身の生命力を高めさせてモチベーションを監督の脅しではなくて自分自身で保たせたというところがポイントです。青学の陸上部の廊下には各選手のレポートが貼られていて、長期目標から始まって短期中期での成果や課題や反省点などが書かれているようです。選手自身が自分たちでミーテイングを定期的に行って、学生主導でバージョンアップしていっているようです。
 ここに今の日本社会が直面しているありきたりのやったことにするどうでもよい会議ではなく、少ない時間で本音を言い合う監督抜きの実り多いミーテイングがある訳です。こんな会議に何か意味があるのと思うような時間のむだはありません。スポーツの世界では実際の競技中は一瞬のプレーが勝敗を分けるためにみんなで相談している暇はありません。それぞれがチームが勝つために何をすれば良いのか考えて、あうんの呼吸で判断しなければいけません。常に仲間の性格や意見を知り尽くして、何も話しあうことなくベストの行動が出来る組織は強いということになります。今回は青学が見事に選手一人一人が考えることのチームを作ることが出来て優勝したからこそ、信じられないタイムも生まれた訳で、それを考えて実践させた原晋監督は素晴らしいの一言です。選手をスカウトする時も、タイムよりも学生の生命力の高さを見て、オーラのある選手や会話のチャッチボールが出来る選手を選ぶのだそうです。野球の野村監督も同じようなことを言っていましたし、企業が新入社員を選択する時も同じ様な基準で最近は選ぶようになったのではないでしょうか。学歴はある一定以上であれば生命力が問題となるようです。
 今回の青学の選手登録に際して一人の選手が今までの監督の教えを守ったようなエピソードがあります。4年生エースの川崎という選手が大会前に足を痛めて走れるか走れないかの判断であったようですが、本人が監督に「 最後の箱根駅伝ですが、走れるか走れないか迷っているような私を登録するよりはしっかり走れる下の学年の選手を登録した方が勝つ確率は高くなるし来年にもつながるので私を外してください 」と直訴したようです。チームが勝つためには自分自身のプライドを捨てることが最も大切で、そのことでチームの指揮も高まると考えたのでしょう。素晴らしい考えを持った選手であり、このようなことを言わす土壌を作った監督に敬意を払います。
 全ての人間は自分が一番可愛いのが本音ですが、それおも乗り越える組織全体を考える理念を持つことがいかに大切であるか。トップに立ったことのある人間ならみんな分かっています。でも、ほんの一握りしかこうした本物の組織が出来ないのは、トップの人間自らがそうした行動をとってないからなのです。ですから下に教えることも出来ません。トップが自らの欲望やプライドを捨てて、下のものに接して自分自身で考えさせる教育をすれば、全ての組織が勝てる組織になるはずです。例え失敗しても一人ひとりがその原因を反省して修正できるはずです。
 今年も私自身も大変多忙な日々を過ごすことになるでしょう。みなさんも大変な時期であると推察します。青学の原晋監督の組織作りを少し参考にしてみたいものです。