院長の独り言
Monologue

2013.1.29

今年の箱根駅伝に思うこと

毎年正月2日3日の私の行事となっている箱根駅伝は、今年は少し様相が異なっていました。優勝候補の東洋大学、駒沢大学、早稲田大学やダークホースと言われていた青山学院などではなく、昨年ビリから二番目の成績で予選会から出なおした日体大が優勝したのです。前回の私の独り言にたまたま日体大の主将の服部翔大のメンタルの強さを紹介して、最高学年ではない彼を中心にチームの再建した日体大は期待が持てるということを書き、二位くらいには入るかなと思っていましたが、まさか優勝するとは思いませんでした。
 今回の日体大の勝因はいろいろと言われていますが、私なりに分析して日頃の私たちの生活に役立つように思いますので再度書かせて頂きます。
 昨年の正月に屈辱を味わった直後に別府監督は新4年生を差し置いて、新3年生の服部を主将に指名してから、新4年生の上級生から我々にやらしてほしいとの申し出があったようですが、監督は譲らず4年生は結局話し合って自分たちの不甲斐なさを認めて新キャプテンを盛り上げるという方策にでました。それは監督のねらったところであったと思いますが、別府監督も自分自身を戒める手を打っているのです。それは自らの恩師である元西脇工業の駅伝監督の渡辺公二さんに頭を下げて助けを乞うたのです。まさに自分自身もプライドを捨ててなりふり構わずにチームの再建を図ったのです。渡辺さんと言えばNHKの番組にも何度も取り上げられた人物で、昭和43年ころ兵庫県でも有数のワルが沢山いて、暴力も毎日の様に行われていた西脇工業に赴任して陸上部を立ちあげて長年に渡り全国で何回も優勝するような実力校にして、さらに西脇工業も企業から引きがあるほど品格のある高校に変えた有名な先生です。モットーが駅伝はタスキに秘められた心をつなぐスポーツなので、日々の規則正しい生活があって初めて勝つことができる。だから、毎日の挨拶、掃除、感謝する心など当たり前のことをこつこつとやるものが勝利を得ることができるとの考えを持っていて、日体大に行くなりそのことが疎かになっていることを指摘して、自ら寮に一緒に住んであいさつ、朝5時からの掃除、草取り、禁酒、夜の10時半の就寝を徹底したようです。現代の子にはとても難しい生活だったようで、退部するものも数名いたとのことです。ですが、この当たり前の規則正しい生活のお陰で、選手は箱根駅伝の当日、誰一人として他の大学の選手と張り合っているものはいませんでした。自分が普段の走りをして、当たり前に自分の力を発揮することに努めていたように思います。20区間で区間賞をとったのは、5区のキャプテン服部のみで後は良くて区間2位でした。有名選手がいるわけでもなく、平凡な選手がただ自分のベストの走りをして、タスキに秘められた心をつないでいるように思えました。復路でスター選手を揃えている東洋大学が前半無理をして、日体大に迫っても無理をせずに20kmを自分の同じペースで走って、最後には東洋を離すという展開でした。
 渡辺さんが毎日の様に教えた規則正しい生活がまさに実を結んだのでした。
生活の乱れは心の乱れに通じて、結局心をつなぐ駅伝では、生活が乱れていればいくら素質のある選手でも負けてしまうということなのですね。
 この原理は大学受験でもよく言われる話で、受験で勝つには日頃のあいさつ、掃除、整理整頓、早寝早起き、感謝の気持ちなどをしっかり行なっていないと勝てないと進路指導の優秀な高校の先生は言います。二人の子供の受験を終えて全く同じ原理なのだとつくづく思います。
 自分自身に置き換えても、心が乱れては良い診療はできません。心が乱れないように身の回りを綺麗にして、規則正しい生活に努めたいと今回の箱根駅伝を見て、自分を戒めました。