院長の独り言
Monologue

2012.9.30

階段の前で

今月は私の弟の次男の下手一将(かずま)君が県の弁論大会で島根県教育長賞(2位)を受賞したので、その要旨がとても素晴らしのでご紹介します。
 一将君は生まれつき筋力が弱くなって行く脊髄性筋萎縮症という病気で、一度も歩いたことがありません。
 タイトル:階段の前で
「僕は生まれつき全身の筋力が弱る病気で立つこともできません。
 シャツも自分で着ることができないし、人の介助なくしては生きていけません
 3歳くらいから周囲との違いに気づき始めて何をするにも消極的になって
 自分を抑えて生きてきました
 そんな自分を変える出来事がありました
 中学に入学した時に家族で神社に行った時に、神社に到達する最後に五段の階段がありました。この先に行きたいが家族に迷惑をかけることが嫌なので行きたくないと言い張りました。そこで普段はめったに怒らない父が「自分を殺すようなことはするな」と怒りました
 今までみんなに遅れを取るのが嫌で、出来ないことを無理にするとこを見られるのがかっこ悪く、全てのことに消極的になっていた自分を反省し
 「やってみよう」と制限された中でも自分にできることはないか探すようになりました
 体育祭や合唱コンクールでは裏方に回ってみんなをサポートしました
 クラスがまとまる様に学級委員の手助けもしました
 その一つ一つの積み重ねで自信がつき、行動の勇気が湧いてきました
 何も出来ないとうずくまっていた自分がいいようのない力が湧いてきました
 人のために何かして、人に喜んでもらうことが生きがいとなってきました
 障害者の自分にとってできることは制限されているが、障害者にしか感じないこと障害者にしかできないことがある
 かつての自分のように階段の前でうずくまっている人がいたら、くよくよするより一歩踏み出す勇気を出してあげることは自分にしか出来ません
 自分の可能性を信じて新しいことに挑戦する
 人のために生きることは、 僕の人生の決意です」

 以上が一将君が話した要旨です。
彼は松江三中で2番の成績です。同級生の面倒を見て、家に呼んでゲームをしたりして託児所の様になっています。来春には高校進学ですが、松江北高校や松江南高校ではサポーターがつかないので、行く事ができません。トイレに自分の力では行けないからです。でも、松江高専がサポーターもつけるし、介助の設備も整えてくれるとのことで松江高専に入学すると思います。その後の進学は親の介助が必要なので、島根から出ることができません。彼が言うように障害者でしか出来ない何か大きなことをやってくれそうな気がします。また、電動車椅子サッカーが上手で電動車椅子のサッカーワールドカップを目指しています。
 我々健常者は、小さなことで不平不満を言って生きていますが、自分一人で何でも出来ることに感謝をして、劣等感、優越感、しょうもないプライドは捨てて今しなくてはいけないことを常に考えて行動する必要がありますね。
 私も一将君に笑われないようにしっかりと生きて行きたいと思っています。