坂本竜馬の出世
NHKの大河ドラマで坂本竜馬の生涯を取り扱っています。竜馬はご存知の様に幕末に攘夷派や開国派のどちらにも偏ることなく、日本を心から愛して長州藩と薩摩藩を結びつけた人です。竜馬がいなければ日本はばらばらになって外国の植民地になっていたかもしれません。しかし明治政府を見届けることなく、何者かに暗殺されてしまいました。誰が暗殺したかは未だに不明で諸説があります。多分力を持ちすぎて見方の筋に裏切られた説が有力だと最近では言われています。私も同感です。
では土佐藩の身分の低い家に生まれた竜馬がなぜ歴史に名を残す人物にまでなったのでしょうか。土佐藩を脱藩した竜馬はその罪をある時期から許されています。多分その時期から土佐藩のスパイ活動を行っていたのではないかと言う説があるのです。長州にしても薩摩藩にしても大活躍しているのはすべて下級武士です。今のようにインターネットのない時代では、江戸や京都での情報は藩にとってとても大切で藩の存亡にかかわるものでした。しかし、もしスパイ活動がばれた時のことを考えると上級武士では都合が悪かったのです。下級武士なら何時捕まっても勝手にやったことだからと言い逃れができます。スポンサーがいなくては竜馬のような大きな仕事は出来なかったはずです。
竜馬は何時殺されるは分からない人の嫌がる仕事をひたすら一生懸命に行ったのです。そうしている間にいろいろな情報を知り、外国を含めた有力者と知り合いになることが出来たのです。最後は殺されてしまいましたが、竜馬を知らない日本人はいないくらいの重要な歴史上の人物になることが出来たのです。
上司から冷や飯を食わされている間に力をつけた人は足腰が強いです。生の目で知りえた情報を得て、自分の足で掴み取った人脈はその人のピンチを救ってくれます。何よりも自分自身の眼力が大きくなり、判断力も正確になります。
会社に入社したり新しく政治家になったりすると大抵はつまらない仕事から始まります。そこで、普通の人間はこんなつまらない仕事をするためにこの組織に入ったのではないと不満を持ちます。最近の新入社員の離職率の高いのはそのためです。学歴の高い人ほどそうなると思います。小さいころからずっと高いレベルにいて、何も下積みを経験せずに大人になるからです。何でも安易に情報やマニュアルが手に入るので、自分で失敗しながら試行錯誤を重ねてないからです。
組織に入ってから長い時間が経過している人でも遅くはありません。ぜひつまらない仕事を一生懸命にやってください。私の経験からも研修医や大学院の時代に上の先生から雑用をこなすうちに知恵がついて、その頃の私を良く知っている人は今でも本当に力になってくれます。
私の上司の島根大学病院長の小林祥泰先生は、今年の4月に内科学会の会頭を務めました。地方大学では新潟大学と岡山大学についで3番目です。彼の特徴は講師の時代から、どんなつまらない雑用でも一生懸命に取り組んでいました。そのとばっちりが我々部下にも回ってきて大変でしたが、とにかく思いもかけないスピードで出世されました。
今の時代はネットで何の情報でも瞬時に得る事ができますが、深い人脈や鋭い感性はネットでは得ることができません。汗水たらして得たものほど尊いものはありません。今からでも遅くはありません。不平不満を言う前につまらない仕事を地道にこなしてみませんか。やっているうちに面白くなりますよ。力をつけて仕事を発展させて、上司も無視できない存在になるのです。竜馬のようにはなれなくても今までよりは明るい未来が開けてきますよ。10年後にはそのことがはっきりと理解できるはずですよ。