院長の独り言
Monologue

2010.4.30

木村拓也コーチの死

巨人軍の木村拓也コーチが試合前の練習中にくも膜下出血で倒れた後に病院で死亡しました。多くの国民が映像で倒れる姿を見て驚いたと思います。彼は捕手として日本ハムに入団して、その後広島カープにトレードされて一時はレギュラーの内野手でしたが若手の台頭で控えになりさらに巨人にトレードされて昨年引退して巨人のコーチになりました。
 投手以外のポジションは全て守ったことがあるユーテイリテイープレヤーでした。その木村さんが昨年引退して巨人のコーチとなって全球団の新人選手に教育講話を行っています。
 その時の話がとても気に入ったので紹介します。「プロ野球に入団した皆さんは、今まで自分が一番野球が上手できっと活躍すると思っていると思います。しかしプロ野球はそんなに甘い世界ではなく、すぐに活躍できるのはほんの一握りの選手です。必ず壁にぶち当たります。その時に私のことを思い出してください。私はレギュラーになれなくてもどのポジションでもこなすようになることによって、プロ野球での自分の存在を見出しました。レギュラーが怪我をしたり、代打で出て誰もいなくなった時にその選手の代役を務め、10年以上も守ったことのない捕手も延長で経験しました。何でも言われたポジションをこなすのが私のポジションです。もうこれ以上だめだと思った時にこんなプロ野球の選手がいたことを思い出してください。きっと新しい道が見つかります。」と言ったのです。
 プロ野球だけでなく、全ての社会人に通じる言葉です。全ての人間が一流の企業戦士にはなれません。また、必要もありません。必ず木村さんのような陰で踏ん張る社員が必要です。普段は目立たないが、いざという時に頼りになる人が現代社会で必要なのです。この様な人材を会社は必要としています。どんな一流会社でも東大卒ばかり集めては組織が成り立ちません。かつての巨人軍のように4番バッターばかり集めてはみんなホームランを狙うので野球にならないのです。
 木村選手の死亡に際して多くの球団の選手が涙を流して、追悼試合も両軍の選手が死に物狂いで戦っていました。木村選手のチームのため他の選手のために一生懸命に働いた姿勢にみんな共感していたのだと思います。
 もう一つ、巨人の遊撃の坂本選手に木村さんが言った言葉も気に入っています。「エラーをした時に下を向くな」。失敗した時にはくよくよせずに次に成功することで組織に貢献しなさいという意味だと思います。
 こんなにすばらしい方が亡くなられたことは、プロ野球にとって大きな損失ですが、木村さんは天国で言っているかもしれません。「私があのような形で死ぬことで、組織につくすことの大切さを理解して頂いて本望です。」と。
 木村さんは自分が劇的に死ぬことで永遠に真のユーテイリテイープレヤーになったのかもしれませんね。
 決してスポットライトの当たる仕事だけが仕事ではありません。皆さんも参考にしてみてください。