院長の独り言
Monologue

2009.3.25

日本人の心

WBCで侍ジャパンが優勝することができました。このことに因んで日本人のこころについて述べてみたいと思います。今回の日本チームの優勝は監督、コーチ、選手、スタッフのお互いの信頼が勝ち取った優勝と私は考えます。アメリカチームは個人個人の能力は日本や韓国チームよりは高いものを持っていますが、チームとしての連帯感や信頼関係が乏しかったのが敗因であったのではないでしょうか。ある程度のスポーツのレベルに達すると、チームメートを信じてすべての選手が脇役でも良いと考えるようになった時に、神様は信じられない力を与えてくれるように思います。スポーツ以外でも日本の伝統的な勝ち方の精神です。日本の企業においても、アメリカのその場の利益優先の精神を主流にしたグローバル化の波に流された結果が、アメリカ発の経済財政破綻で日本経済の破綻を招いたことに日本人も気がついてきたようです。そして、この時期にWBCで優勝することが出来てこんなに嬉しいことはありません。韓国も日本と同じようにアメリカに利用された結果、日本以上に経済破綻を招いています。この両国が決勝で互角の勝負をしたことも意義あるものと思います。
 日本はもともと弥生時代から農耕を主とした民族なので、狩猟を主とした欧米とは考え方が異なっています。長い歴史の中で、日本人の遺伝子は個人の手柄を立てるよりも組織の勝利を優先するようにできています。米を作るのに仲間の手助けなくしては成り立たないからです。和を尊ぶ長所の裏返しに、和を乱すものを村八分にするなどの短所もあります。しかし、欧米の狩猟民族に見られるような個人プレーに徹するには適さない民族なのです。アメリカ合衆国オバマ大統領のような強烈なリーダーシップは日本人に合いません。小泉総理がその傾向にありましたが、今日の大不況と格差社会を招いてやはり失敗に終わりました。
 日本人には信、義などの言葉にあるような、人と人の信頼をあらわす様な精神的な結びつきが最もぴったりくるのです。私が生きて来た医者の世界でも信、義をおろそかにしている人は一時的には良い結果をもたらしても、最後は必ず失敗しています。私もいろいろな人に裏切られてきましたが、自分が人を利用して裏切ったことは一度もありません。その流儀が長い人生の最後の方で、多くの人に助けられているような気がします。自分の息子にもそのことを教えて行きたいと考えています。
 今年の大河ドラマの天地人で、信義を重んじる上杉謙信が直江兼継に教え込んだ言葉がとても印象的です。「生中に生なし、死中に生あり」という言葉です。生きようと思えば生きられないことが多く、死んでも良いと覚悟すれば生きられることが多いとの意味です。自分だけが成功しようと考えてもなかなか成功するものではなく、自らの持ち場で周囲の人の為に精一杯生きて行く結果の延長戦上に、成功が用意されているという意味です。目先の欲に目をくらますことなく、仲間を信じて義をもって接して精進すれば自ずと良い結果となるのです。
 今回、WBCの優勝と上杉謙信の言葉が重なって私の最も好きな哲学を述べて見ました。