院長の独り言
Monologue

2008.12.1

方向音痴

今月は方向音痴に関して考察してみます。
 人間の方向感覚に関する素質は生まれながらのもので、極めて不思議な違いがあります。私自身は方向感覚は特にしっかりしているタイプで、どんなに知らない土地に行っても東西南北の地図が頭に出てきて道に迷うことはありません。道路が混雑しているときは、初めての脇道を探って何とか目的地に早く行くことが出来ます。私の妻は方向音痴で、義母は方向感覚がしっかりしていて義父は方向音痴です。
 人間はなぜこのように方向に関して違いがあるのか最近分かってきました。大脳は右脳と左脳に別れていて、右脳は感覚的な働きを司り、左脳は言語や論理的な働きをします。その左右の脳の連絡路の橋があり脳梁といいます。その脳梁が細い人は左右の脳の連絡を密にとらないために、左右脳それぞれが自分の働きをしっかり行うことができます。雑音が入らないために方向の東西南北がぶれることがありません。その代わり道路で知り合いを見たとかあそこにケイキ屋があったとか、方向など自分が必要とする情報以外は入ってきません。方向音痴のナースと往診に行くと患者さんの誰々がいたとか、新しいレストランが出来たとか道順と関係ないことはよく見ていますが、道路事情は何回行っても全く覚えません。当院の職員の60%が方向音痴でした。一般に女性が脳梁が太く方向音痴である割合が高いと言われていますが、逆の人もいます。職員の配偶者はどうかと調べたところ、すべての職員が方向感覚が逆の人と結婚していました。方向感覚がしっかりしている女性職員はちゃんと方向音痴の男性と結婚していました。
 私の独断的な考えですが、方向感覚で相性が決まると思っています。脳梁が細い人は左右脳の連絡が少ないために、独自の考えを突き通すことが得意で、職人や専門職に向いています。一流のシェフや芸術家に男性が多いのはそのためです。しかし、考え方の視野が狭く多くの意見を集約してまとめたり、民主主義的な手法は苦手で、どうしても自分の考えに固執してしまいます。
 一方で、脳梁が太い方向音痴の人はどうかというと、器用貧乏で何でもこなすところはありますが、超一流の道を究めるのが苦手で移り気で優柔不断なところがあります。その代わり、みんなの意見を聞いて総合的に判断したりすることは得意です。革命を起こす事は苦手ですが、みんなと仲良くすることは得意で中間管理職に向いています。
 脳梁の細い人は太い人の調整能力を必要として、太い人は細い人の独特の創意工夫を必要とします。私自身も新しいアイデアが浮かんでいざ何かを始める前に、必ず妻や職員に確認することにしています。すると必ずクレームが付くような意見を言ってくれます。それは後ろ向きの考えではあっても、物事を始めると起こりうるトラブルを想定してくれているかの様で大変参考になります。新しいことを開発する場所では脳梁の細い職員が望ましく、今の現状を守って行きたい場所では脳梁の太い職員が望ましいのです。
 夫婦関係ももちろん同様です。新しい企画は脳梁の細い人が担当して、家庭円満の方法は脳梁の太い人が主に担当すると、永遠に幸せな家族でいることができると私は考えています。私自身、家の事は一度も妻に逆らったことがありません。それで20年間大過なく夫婦生活を続けてきました。参考にしてみてください。