巨人ファンをやめて楽になった
私は小さい頃から、負けず嫌いで巨人、大鵬、卵焼きが好きで、勝負は勝たなければ気が済まない性格でした。テレビで野球のナイター中継を見ていて、巨人がどうしても勝つ確立が高く、そのため巨人ファンになったのだと思います。父はアンチ巨人でいつもお金をかけて良い選手を集めている巨人は勝って当たり前だと非難していました。
日頃の生活でも、どうしたら人に勝つことが出来るのか考えて生活していました。医者になってからも、同僚よりも研究や臨床で良い成果をあげることを考えて努力してきました。その努力の結果と周囲の人々の温かいご支援があって今日の自分があることは分かるのですが、どこまでも勝ち続けることは不可能です。もっと上に行こうと思っている限り、いつまでたっても空腹が満たされることはありません。
そんな時に巨人がフリーエージェント制度を使って他球団の4番バッターをお金で集めだしました。それでも大した成績が得られる訳ではなく、むなしいお金の使い方が目立つようになってきました。自分自身は10年前に一文無しから開業して親から引き継いだものもなく、苦労の連続の中で何とか自分のクリニックを発展させてきたので、何か巨人とは違う人生を歩んでいることに気づきました。そんな時に楽天が仙台に新球団を作りました。三木谷オーナーは嫌いですが、他球団の二軍選手を集めて一生懸命に市民と共に戦っている姿に共感して応援するようになりました。巨人を応援している時は勝って当たり前なので、その日に負けると腹が立ちますが、楽天は負ける事が当たり前なので、たまに勝つと良く勝ったなと感慨深くなります。この巨人を応援することと楽天を応援することの、精神的なストレスの差は極めて大きいのです。ただ勝てば良いのではなく、どのようにチームを作って行き、どのような理念で戦うかが大切なのだとやっと気がついたのです。
なかなかやめられなかった巨人ファンを晴れてやめることが出来ました。その結果世の中を見る目が大きく変わりました。他人の良いところを見つけてあげることが上手になりました。SMAPも世界に一つだけの花で「ナンバーワンにならなくてもいいいーーーー」と歌っているように、常に1番にならなくてもその努力の過程が大切なのです。できれば楽しんで勝負をしている姿を見たくなりました。高橋尚子がオリンピックに出られなくても、マラソンというスポーツを通して、人生勝つことだけが大切なのではなくて、例え勝てなくてもそのもがき苦しむ過程の中で、何か楽しいことを見いだすその姿勢に高橋尚子ファンは惹かれるのだと思います。テニスの伊達公子も今年復活しました。誰も伊達に大きな活躍は望んでないと思いますが、彼女自身がトッププレイヤーの時代にはなかったテニスを楽しんでみたいと気分になったのだと推察します。
私自身も他の人との競争や相対的な位置関係などはどうでも良くなりました。いかに日頃の診察や家族との生活を楽しむにはどうすれば良いか。そのためにはどのような努力が必要かと考えることが出来るようになりました。先月の独り言に書いた様に息子の数学を楽しむことが出来るようになって成績が上がったという言葉には、50歳を前に私が理解できたことを16歳の息子が気がついていたことに驚きました。
皆さんも勝つための努力だけでなく、楽しむための努力をしてみませんか。人生が何倍も楽しくなりますよ。