Tさんが教えてくれたこと
2024年11月30日に当院の看護師であったTさんがご逝去されました。享年50歳の若さでした。6年数か月前に当院で働きだしましたが、その時すでに胆管癌に侵されていていつまで働けるかわからない状態でした。その10年前の出産時にたまたまエコーで胆管癌が見つかって手術を受けていますが、癌が取り切れていなくてずっと戦ってこられていました。家庭のことで相談をしに来られて、いつまで働けるかわからないが看護師として最後に当院で働きたいことと3人の娘の将来を見届けるまで頑張ってみたいとの申し出で、当院で働き始めました。職員には状態を告げずに私と看護師長だけが癌の状態を知りながらの勤務でした。当院で漢方薬で治療を始めたところ、外科の主治医から癌が小さくなって、腫瘍マーカーも減って来たとの報告を受けた時は本当に嬉しかったです。夫婦間のストレスもありながら、職場では全ての職員に気を遣うことの出来る素晴らしい職員でした。
2年3年と順調に経過して行って、とても悪性度が最も高い胆管癌を持っている人とは思えないくらい元気に頑張っていましたが、5年位経過したあたりから癌も少しづつ大きくなって腫瘍マーカーも増えてきました。3人の娘も順調に成長して、長女は自治医大に入学して4年生になっていてあと少しで医師になるとことです。今年の夏ころから時々入院する様になりましたが、すぐに退院して職場に復帰していました。9月10月は足の浮腫も認められて腹水も著明になって来て、休みながら歩行する状態になって、当院では座ってパソコンを打つのがやっととなり、10月末をもって退職されて、すぐに緩和ケア病棟に入院されて、1か月で最後を迎えられました。
彼女が我々に教えてくれたことが沢山あります。最も悪性度の高い胆管癌に罹患しようがどんな最悪の状態になろうが、決して諦めずに前を向いて生きて行くことの大切さを第一に教えてくれました。また、どんなに辛くても彼女が泣いたところを見たことがありません。いよいよ最後にみんなで見舞いに行きましたが、そこでも笑顔で迎えてくれて、我々に最大限の気を使ってくれました。常に前向きに生き抜く姿は、後に残された娘たちに与えた力は計り知れないと思います。自分の入る墓も娘たちは嫁に行くので、永代供養の寺を探して契約して、墓も用意してありました。葬儀で娘さんたちを見かけた時に感じたことは、もうすでにお母さんの死をしっかり受け入れていて、立派な立ち振る舞いでした。Tさんが残した集大成の娘さん達で、きっと立派な社会人になることを確信しました。
本日12月27日は奇しくもTさんの51回目の誕生日です。私達はTさんと働くことが出来たことを誇りに思うし、Tさんから教えて頂いた優しさ、粘り強さ、家族愛、計画性などしっかり胸に刻んで生きて行かなくてはいけません。
「Tさんありがとう」