院長の独り言
Monologue

2021.7.25

清原和博の再起

先日、プロ野球の巨人阪神戦の試合を清原和博さんが解説していました。試合後に原監督が手を振ったら、「感動しました。頑張って来て良かった。」と語っていました。引退後は覚醒剤の影響からか、人の悪口ばかりを言っていたのが一転して非常に真摯的な解説をしていました。
  2016年に覚醒剤使用で逮捕される数か月前に、銀座のすし屋で偶然清原さんを見かけました。私から二つ席を離してあって背を向けて二人の子供を守るようにしていました。数か月後に逮捕されたので大変驚きました。
  そして現在は、あの頃と違ってとても優しい紳士的な目つきに変わっています。あの二人の子供も長男は慶応大学の野球部に入部して先日テレビにも出ていました。次男は慶応中学に在籍してリトルリーグで活躍しているようです。
  覚醒剤を使用してしまうと常習性が非常に高くて再犯率も高いので、大抵は一度捕まったら警察にマークされます。ここで、家族がいなくて自分のためだけに生きている人はほぼ再び手を付けてしまうことが考えられますが、清原さんのように守るべき子供や家族がいたら全然異なってくると思います。自分が逮捕されたら子供に迷惑をかけると考えるだけでかなりの抑制がかかってくるはずです。
  人は一人では生きていけません。家族や同僚や全ての地域社会の人達の世話になって生きています。私の場合は、家族やクリニックの職員や当院に来院される多くの患者さんの世話になって暮らしています。ですから私の体は自分一人のものではないと考えて暮らしています。ここ6年位酒も一滴も飲むのをやめて十分な睡眠とストレスをなるべくためない生活をするように心がけています。特にここ数年は新患の予約が2023年5月で7千人近くの方々が初診の肥満外来を待っておられます。しかも最近ではほとんどの方がキャンセルもせずに来院されます。多くの人々に期待されていることに生きがいを感じて、さらに漢方薬の上手な使い方を学んでいます。
 世の中で一番不幸な人は、誰からも愛されないで孤独の中でしか生きていけない人なのです。「誰かが自分を愛してくれている。誰かが自分を見てくれている」と思えるひとはどんなに苦しい状況でも人は生きがいを持って生きていけます。清原和博さんは離婚していても子供とのつながりがあって、愛情を注いでいける限りはもう薬に手を染めないことでしょう。私は期待を込めて彼のこれからの人生を見守りたいと思っています。
  日本社会は一度失敗した人がもう一度立ち上がるのにとてもハードルを高くしています。島国で村社会の秩序を保つことがとても大切で、人はなかなか変わることが出来ないという考えから長い時間をかけてそのような風潮になってきているのだと思います。ですが、現代社会は多種多様で一度失敗した人でも活躍できるような場所が存在するようになってきました。誰しも一度や二度は過去にあの時の行動は間違っていたと思い起して恥ずかしくなることはあるはずです。清原和博さんのように一度道を外した人でも、再びチャンスを与えられるような社会になって欲しいと願っています。