院長の独り言
Monologue

2020.10.22

飼い犬に噛まれた訳

我が家には老犬チワワの兄妹(コロン、ポッキー)が2匹と若い雌のチワワが1匹(チー)と柴犬の雌1匹(さくら)が家の中に住んでいます。老犬の雌のチワワのポッキーが一番威張っていて女王様です。コロンもポッキーもとても頭が良くて運動神経が抜群で人間の言葉もほとんど理解できます。若いチワワのチーちゃんが一番美人ですが、頭が悪くて運動神経も悪く、てんかん発作を持っています。チワワはリビングで暮らしていて、娘はコロンびいきで妻はチーちゃんびいきです。柴犬のさくらはチワワに仲間外れにされていて廊下が居住スペースです。妻は動物愛護の精神が強くて、チーちゃんとさくらがペットショップで売れ残っていたのを可愛そうだとのことで買ってきました。普段の世話はほとんど妻が行っていますが、私がさくらへより愛情をかけるようにしています。
  それなのに過去に3回も出血が止まらないほど噛まれたことがあります。それも愛情をかけようと撫でてあげた時なのです。3回とも厳しく怒って、日本人と同じで1週間位尾を引きました。チワワは怒られてもすぐに陽気に忘れてくれます。犬はその生産された国の人々の人間性に似ていると言われます。ではどうして可愛がろうとしている時に噛まれたのでしょうか。最初に2回噛まれた時にはエサをあげていなかったので、そのためかと思って朝と夕方に2回おやつをやるようにしていましたし、歯磨きをしている時になでて欲しいらしくて私の足を鼻でつつくので、歯磨きしながらなでるようにしていました。自分としてはチワワ以上に可愛がっていた中で噛まれたので大変ショックを受けました。その時妻に「さくらは休んでいる時にはそっとしておいてほしいみたいだよ」とアドバイスを受けたので、それ以来さくらと接触するタイミングを変えました。さくらが私に近寄って甘えて来た時のみなでるようにしました。柴犬との距離感を私が理解していなくて、柴犬がリラックスしている時に私の勝手で可愛がろうとしたので、野生の本能で怒って噛んだというのが真実のようでした。
  考えて見れば、人間関係においても人との距離感ほど大切で難しいものはありません。患者さん一人一人との距離感は人によって違います。働く仲間との距離感が理解できなくては、パワハラの原因になったり、労務管理が出来なくなります。配偶者との距離感が理解できなくて離婚する可能性が高まります。親子の距離感もとても難しいことは皆さんもご存じでしょう。
  剣道では間合いといって、相手の竹刀が遠すぎると自分の技を出した時に届かないし、近い間合いでボーっとしていると相手に打たれてしまいます。剣道の間合いは教えられるものではなくて自分の経験でつかまなくてはいけません。竹刀を振るスピードが速くても間合いを取るのが下手な剣士は試合で勝てないのです。
  当院は地元の出雲の患者さんは20%で70%が県外の患者さんです。地元の出雲の患者さんは奥ゆかしく話をされて、県外の患者さんははっきりと主張されます。広島と岡山でも性格が違いますし、関西はもっと主張が強くなって距離感も近くになってきます。東京の患者さんは極めて標準的です。それぞれの距離感を考えて働くと、一人一人の新患を診るのが楽しくなってきます。
  人間は一人では生きていけなくて、必ず多くの人々とのかかわりの中で生きていけるので、自分の周囲の人との間合いをはかりながら人生を成功に導いていけるのではないでしょうか。人間は犬と違って言葉を話すので、言葉の魔力で自分を大きく見せたり小さく見せたりしながら、相手を惑わせて暮らしています。柴犬の様に野生の本能は見せてくれません。自分とかかわる人の本質を見抜く目を身につけて、一人一人との異なる間合いがわかるようになった時に初めて全ての人間関係が上手く展開するのではないでしょうか。
  適切な距離感こそ、パワハラを防いでくれて、人間関係に悩んでうつ病になったり、自殺に至ったりすることも防いでくれるのではないでしょうか。また、物と人間との距離感がわかった時に、新しいヒット商品を生み出すことが出来てきます。将来AIの技術が進んで人間が考えない様になっていく中で、AIとの適切な距離感をつかんでいってこそ日々の豊かな生活を生み出してくれるのではないでしょうか。