院長の独り言
Monologue

2017.4.30

素直で要領の悪い人は伸びる

私は大学病院の様に難病はあまり治療していなくて治る病気を主に治療しています。その上で食事や運動、睡眠、禁酒など生活指導が大変重要になってきます。漢方薬で主に治療するのでその人にあった投薬をするのは私の仕事ですが、生活指導を守るのは患者さんの仕事です。
  最近、大変感じているのが素直に私の指導を聞いてくださる人は治りが大変良いということです。素直に愚直に一度は私を信じて、自分の考えを棚上げして指導をまずは実践してみることが大切なのです。言われたことを要領よくカットせずに全てをまずは実行してみるのです。その上で治らなければ私の見立てが悪いということになります。
  高校生までの勉強では必要なことを要領よくまとめて、無駄を省いて勉強したものが勝って行きますが、医師や科学者になってからの勉強はいかに素直に要領悪く頑張っていく人が勝ち残って行くように思います。
  漢方薬で全国で医師向けに講演してまわりますが、私の言うことに愚直に耳を傾ける先生は伸びて行くような気がしています。
  例えば、私の研修医の時代は今の研修医と違って特別なメニューはありませんでした。寿司屋の職人の様にただひたすら恩師の小林祥泰先生の真似をしました。食事を早く食べてすぐに次の仕事に取り掛かること、夏は回診の前に河川敷でゴルフをすること。先生は内科の薬のみならず眼科や精神科などの薬も使うことが出来るので、多くの薬を覚えました。それで現在2000種類位の薬を使い分けられる様になりました。漢方薬を学んだ寺澤捷年先生は私に漢方薬以外に落語を聞くことを勧めて下さったので、古今亭志ん朝の落語のCDを全て買って覚える位に何度も何度も聞きました。その成果があってか全国に講演に呼んでもらえるようになりました。
  東京の行きつけのおのでら寿司のナンバー2の職人は大将の口ぶり冗談たたずまいなど全てを盗もうと努力しているみたいで、最近は大将に似てきて腕も随分とあげています。
  この様に自分のまわりの成功者や指導してくれる人の話を素直に聞くことが遠回りなようでも、最速の近道なのです。誰しも最初から出来る人はいなくて、実行して失敗する。また実行して失敗する。この繰り返しの中で進歩していくのですが、師匠の真似をそのまましてみてその中の何でもないようなことの中に成長の最も大切なエキスが潜んでいることが多いのです。実行する前から無駄だからやめておくのではなくて、まずは全てを実行して見ること。つまりいかに要領悪く立ち回るかが大切なのです。無駄や遊びのない人生ほどつまらないものはありません。
  現在の私にとって一見無駄なようで有益は活動はロータリークラブに出席することです。大した活動はするわけではありませんが、ただ火曜日の昼の例会に出て食事をしながら他愛もない話をして帰る。ただそれだけのことなのですが、時に長老から怒られる事もあれば、年下の人の素晴らしい活動に感動することもあります。そのためか自分の生活を謙虚に日々反省することができます。
  素直に愚直に生きること。要領悪くただひたすら人に話に耳を傾けること。日々謙虚に反省しながら努力を続けること。これぐらいが長く成功してく人の共通点ではないかと考えます。
  人に褒められたい。おだてられればすぐに調子にのっていい気になる。どうしてもイエスマンの意見が心地よい。こんな私でも何とか謙虚になろうともがいている毎日です。