院長の独り言
Monologue

2015.7.30

環境に対応

最近自分の科学的知識の上で少しだけ不思議な2症例を経験しました。いずれもアルツハイマー型認知症の患者さんで、2例とも進行が極めて遅いのです。 1例目は10年前に私が診断して、その後どこでも治療してもらってなくて、夫が献身的な介護を続けていて、最近介護保険の申請の都合で受診されました。10年前よりは病状は進行はしているのですが、家族のこともはっきりとわかるし、状況もかなり理解できます。明らかに普通のアルツハイマーよりは進行がゆっくりで驚きました。
 もう一例は大学で漢方治療を行っているのですが、5年前から診察していて、他の医師より西洋医学の処方はされていますが、私のこともはっきりと理解できるし、以前と何も変わらない調子で会話ができます。この患者さんも子供がいなくて夫がマンツーマンで世話をしています。
 2例とも夫の献身的な介護で常に会話をして相手をしてくれています。環境がアルツハイマーの進行に極めて大切であるということは理解できるのですが、何かの遺伝子の異常があって脳内にアミロイドという物質がたまり、細胞を破壊して行くという病態と理解されているので、環境によってこんなにも違いが出るものなのかと疑問に持ちました。そこで、遺伝子に詳しい友に疑問をぶつけて見ました。そこで、私の遅れた科学に対する知識を覆して説明して納得することが出来て、さらに今後の人生に多大なる影響を及ぼすと考えられますので皆さんにもご紹介します。
 一卵性双生児が成人して別々の道を歩んだ時に、例えば片一方は成功して大金持ちになって慈善事業も行っていて、もう一方は事業に失敗して貧相な生活をしていたとします。二人の性格はかなりの違いが出てきて、人相も明らかに違ってきます。遺伝子は同じはずなのにどうして、環境が違ってくるとそんな事になるのかということなのです。
 それは、親からもらった遺伝子情報はあくまで建築でいうと基本設計であり、その後の環境で少しずつ設計変更されて行き、遺伝子情報から作り出される細胞が日々変わってきているらしいのです。ウイルスが入ったり、ストレスがかかったり色々な日々の出来事に対して、私達の細胞核内では常に環境に適合するため、その個体が生き延びて行くために常に変化を重ねていっているということなのです。つまり、なるべく病気や老化現象やに対して良い環境においてやることが、細胞内で戦っている我が同士を応援することになるのです。
 生まれて親からもらった遺伝子は変わらないと理解していた私の拙い科学的知識は間違いであったことを思い知らされました。遺伝子の基本設計は変わらなくても、次々と生まれ変わっていく細胞を環境の変化で本来のものと変えて行くことができるのです。
 生きて行く上での最も大切なことは何かと気づいていける人間は、他の生物に比して圧倒的な差をもって進化して来たのです。だから、人間的に素晴らしい人はさらに素晴らしくなっていく仕組みになっているのです。
 私は持って生まれた基本設計をさらに進化させて、今後の人生を自分の周囲の愛する人のために、その人達を幸せにするためにエネルギーを費やしていく覚悟を決めました。そのことに努力することがさらに遺伝子から生まれてくる私の細胞をより良いものしてくれるので、私も幸せになるし私の周囲も幸せになる。こんなウインウインの世界は他にはありません。
 40歳過ぎたら自分の顔に責任を持ちなさいと言われる理由がはっきり理解出来ました。みなさんも自分の顔が良い表情にになるように、日々良い行いを積み重ねてみませんか。人のためになる行いを一日一つでもやってみませんか。誰も見てないところでする良い行いが、実は自分の細胞を良い方向に導いてくれる近道なのですよ。これは誰でもどんな立場にある人でも出来ることなのですね。
 55歳になって初めて理解した日頃から疑問に思っていたことの解決でした。こんな大切なことを教えてくれた友に一生感謝していきます。