院長の独り言
Monologue

2015.6.30

おごりが人や組織を滅ぼす

6月6日、7日に札幌の講演に行って来ました。昨年、12月にも行って雪が降って飛行機が遅れてやっとの思いで関空からタクシーで帰った講演の続きのシリーズで今回で4回目です。
 いつもの様に4時半に出雲を出発して、羽田で乗り換えて千歳に20時に到着して、そこからタクシーでいつもの会場の札幌グランドホテルに21時に到着しました。チェックインしてからいつものすし屋に行こうと思って、フロントで名前を言いましたが、私の名前での予約がありません。スポンサーの製薬会社の名前も言いましたがそこでとっている部屋はないというのです。支店長の名前を出してみてもなく、次の日の会場は確かにここで間違いなく、その講師であると随分主張しましたが宿泊リストにないとの返答でした。製薬会社の支店長に電話をするもつながらず、ふと以前に駅に隣接したJR日航ホテルに泊まって見たいとの旨を伝えたことを思い出して、札幌グランド・ホテルは諦めて、歩いてJR日航ホテルに向かいました。そこで、名前を言いましたがやはり名前はありませんでした。
 今度は遠い札幌の空の下で宿なしの目に合うのかと一瞬暗くなりましたが、JR日航のホテルマンに訳を説明して部屋を用意してくれないかと頼んでみました。丁度その日はサザンオールスターズのコンサートがドームで行われていて満室でしたが、私の切なる願いが通じてJR北海道の部屋中JR北海道のキャラクターで飾ってある普段は使わない部屋なら用意できるとのことで、まずは宿を確保して予約してあるすし屋に向かいました。
 その、すし屋に行くタクシーの中で支店長の留守番電話にこんなことがあって、明日の講演にはもう行きたくないだの散々悪態をついてやりました。
 30分位してから支店長から折り返しの電話があって大変驚いて、すぐに札幌グランドホテルに連絡して分かったことが、ホテルの宴会係が講演会の会場の予約を受けてさらに講師の宿泊の部屋も押さえた際に、部屋に泊まる人の名前を変更するのを忘れていたとのことでした。
 次の日に会場についてホテルの担当者に言っても響かず、支配人を呼び出して説明を受けました。支配人が「予約が確認できない時は、お客様をまずは部屋まで通してから調査するように言ってあるのですが」との返答でした。
 ここで私は考えました。最初に予約を受けた宴会係が宿泊者の名前に変更したかったのが最大のミスではありますが、それよりも私が到着した時に担当したホテルマンが自分たちのミスもありうることを想定して、私の部屋を用意してくれたらこんなに大きな問題にはならなかったはずです。札幌グランド・ホテルといえば札幌で一番のホテルと言われていて、カレーのルーが全国で売られたりしている老舗です。その日も部屋の空きはあったことをネットで確認していましたので、私を部屋に通すことはできたはずです。自分たちの組織は札幌一の老舗のホテルなのでミスはありえるはずがないというおごりからくる最もやってはいけない2番めのミスが決定的に客を不快にさせ、もう少しで今度は札幌でホームレスになるところでした。
 おごりこそ、繁栄している人物や組織を滅ぼす最も典型的な要素なのです。数千年前から中国では何度もおごりから国が滅んで、別の国に変わってきました。日本の歴史も同じ様なことを繰り返しています。最近では記憶に新しい民主党政権の誕生も自民党のおごりから生まれたものであるし、さらに民主党政権が没落したのも自らのおごりから自然とそうなったものなのです。
 そのおごりからくる没落のからくりを知り尽くして、大きな会社を作って成長させては、次から次へと若い世代に譲って行くのが京セラを作った稲盛さんなのでしょう。稲盛さんが作った塾では徹底的に物事のどおりを教えて、利のために節を違えずの教育を行うようです。
 繁栄している組織でも、人間がやることなのでミスはあるし、ミスを犯したピンチの時こそ学ぶ最大のチャンスなのですが、多くの人はその基本に気がつくことなく同じ失敗を繰り返すことになります。札幌グランドホテルもおそらく変わることなく、いつまで経っても二流の札幌一のホテルでいることでしょう。
 中途半端ではなく、本当に優秀な人は自分や自らの組織を過信することはありません。他人の手助けも必要であることをよく知っています。自らの力に限界があることもよく知っているのです。
 私達多くの人間は平凡で稲盛さんのようにはなれませんが、それでも少しの成功を得ることはあります。その時に決しておごることなく、淡々と努力を重ねて行く人になりたいものです。そうしている限り社会から見放されることはありません。