院長の独り言
Monologue

2014.6.29

三度の飯より好きなもの

ブラジルでのワールドカップも決勝リーグになって佳境に差し掛かるところですが、残念ながら日本は予選で敗退してしまいました。コロンビアに負けた時に選手たちは泣いていました。本田は4年間のサッカー人生が間違っていたかの様なことを語り、長友は人目をはばからずに泣いていました。みんな三度の飯よりもサッカーが好きだがら、こんなにも激しく感情が表に出るのだと感じました。そして、先日知人に「三度の飯より好きなものはありますか。それは何ですか」と質問されたことを思い出しました。
 私はその時に「診察で患者さんを治すことです」と答えました。毎日毎日150人前後の患者さんを診察することは、体力的にも精神的にも多くの負担がかかります。外来が始まる8時半が近づくとこれから始まる試練に対して心が折れそうになります。それでもいざ診察が始まって、患者さんが治って喜んでくれた時の顔を見るときの感覚が大変好きで、三度の飯よりも好きなことになるのです。多分サッカーの日本代表選手にとっても、国を代表して戦った試合でチームが勝った時の喜びは、私の感覚の何十倍もの喜びであり、その感覚を再び味わうために日々の努力を行うことが出来るのだと思います
 食欲、性欲、金銭欲など多くの欲を持って人間は生きていますが、日々のたゆまぬ努力をして勝ち取った喜びは、その本能的な喜びよりも1ランク上の喜びなのではないでしょうか。
 人によると「三度の飯よりも好きなものはありません」と答える人も多くいるでしょう。平和で普通の暮らしをする人にとっては、そんな感覚もありだと思いますが、もしも三度の飯よりも好きなものがあるならば、普段の生活の一部の欲望を我慢してでも精進するその先に、本当に欲しいものがあるのだと思います。それがお金儲けであるならば、その人は必ずやお金持ちになるでしょうし、ボランテイアであるなら多くの人から尊敬される人になるだろうし、旅行であるなら世界中を旅して多くの人にその感動を伝える仕事をするであろうし、人それぞれ異なっていて生まれ持ったものの様に思います。
 私は人の喜ぶ顔を見るのが好きで、家内や子どもたち、クリニックの職員、患者さんたち、私と接触した全ての人の喜ぶ顔を見るのが好きです。ですからその中でも一度害した健康を取り戻した時の患者さんの喜ぶ顔が最も素敵だから、それが三度の飯よりも好きなことにあたるのだと思います。西洋医学的な知識、漢方薬を駆使した治療法、私の五感全てを使って治療する力はついてきます。日々の精進を少しでも怠ると、すぐに結果は悪い方向に行きます。常に努力してないと患者さんは喜んでくれません。なかなか難しことで、ここが自分の限界ではないかと思うことは毎日あります。拙い自分の脳力を全て使っても力が及ばないことは度々あります。何時まで経っても到達点に達しないからこそ面白くて、死ぬまで努力しなくてはならないこの仕事で頑張れれるのだと思います。
 皆さんにとって三度の飯よりも好きなものはありますか。あるならばそれは何ですか。一度心に問いかけて見てください。それが今の生活に直結しているものであればそのまま精進してください。好きなものが趣味であっても、他の生活とのバランスがとれていれば最高です。バランスが取れてないならば、何とか頑張ってバランスを取ってください。好きなもののためならば、そのためにの辛い仕事も我慢ができます。全ての生活が好きなものに直結すれば上手く行くようになります。上司に小言を言われても、クライアントからクレームを付けられても好きなもののためなら我慢ができます。
 これからの人生を有意義に過ごすために、心の底から好きなものを問いなおして見て下さいね。