院長の独り言
Monologue

2014.2.27

セロトニンと緊張

ソチオリンピックが終わりました。多くの日本人が活躍しましたが、浅田真央ちゃんは緊張してメダルが取れませんでしたが、ショートで信じられない失敗をした次の日のフリーで全ての日本人が感動する集大成の完璧な演技を見せてくれて、本人もファンも満足したのでした。一方でスノーボードの平野歩夢くん15歳は初めてのオリンピックで全く緊張することなく自分の力を全て発揮して銀メダルを取りました。韓国のキムヨナ選手も全く緊張する感じがなく銀メダルを取りました。
 一体この違いはどうして起こるのか。医学的に検討してみました。セロトニンが脳内で十分に分泌されているタイプの人間は、大舞台でも緊張することはないのです。そのセロトニンが十分に分泌される様に助ける物質が足りないタイプの人間と足りているタイプがいて、日本人の約8割がセロトニンが足りなくなるタイプで、西洋人には4割しかいません。日本人は農耕民族で、長い失敗の歴史を重ねながら、最もよい方法を子孫に伝えて行くのが得意で、ここ一発にはめっぽう弱いのです。西洋人は狩猟民族ですから、獲物をとる一瞬一瞬に強い様に遺伝子が組み込まれているのです。ですから、日本人は一発屋を好まず、失敗にもめげずにコツコツとたゆまぬ努力をしていく人を好むのです。真央ちゃんがショートで大失敗をして、その精神的ダメージを克服してフリーで出場選手の中での最高の演技をしたことに大変感動するのです。ジャンプの葛西選手が天才と言われながら、緊張する性格からなかなか個人のメダルが取れずにいて、41歳で7度目のオリンピックでやっと努力が実って銀メダルをとったことに、多くの日本人が価値を見出すのも、民族性から好まれるのだと思います。
 野球選手で言うと緊張しないセロトニンが十分に出ているのは長島茂雄、松井秀喜など大きな試合になればなるほど活躍する選手で、逆に日頃の力はあって世界記録なども作るのに大きな試合では力を発揮しにくい王貞治、イチローなどです。松井秀喜はワールドシリーズでホームランを撃ちまくり、MVPになっています。
 どちらの選手が好みかは個人個人で異なるでしょうが、長い人生の中でセロトニンが出やすい人の方が有利かというとそうではないような気がします。そのタイプはムラッ気が多く、長く同じことをするのに飽きる傾向にあります。短期決戦は強いのですが、何十年の自分の人生においては息が切れてしまう傾向にあります。一方でセロトニンが出にくいタイプはここ一発には弱いのですが、長く競技を続けたり、選手や部下を育成する様な粘り強い仕事にはむいていて、多くの日本人はこのジャンルに入ります。だから、日本の産業の技術力は世界に冠たるもので、いつまで経っても長く継続していけるものなのです。無意識の内に日本人はオリンピックで金メダルをとった選手よりも浅田真央や葛西選手の様な苦労して少し報われた選手を好んでいるのだと思います。日本に来た西洋人で、日本の侘び寂びを本当に好きになるような人は恐らくセロトニンの出にくい西洋人なのかもしれませんね。
 当然のことながら、セロトニンの出にくいタイプは大器晩成型で年を取るごとに力を発揮してきます。力があるのにセンター試験で失敗して志望校に入学出来なかったり、上がり症で面接試験で思ったことが言えなくて志望する会社に入社出来ずに、中小企業で働くことになっている人、プロ野球に入っても緊張するのでチャンスを掴めなかったものの一流のコーチや監督になった選手など、華やかな年代では活躍できなくても、晩年に成功して息の長い人生を送るタイプの人達です。
 結論は、日本人は失敗に失敗を重ねてコツコツ努力して勝利して行く民族なので、失敗に憂うことなく歩み続けることが大切なのですね。一発に強いタイプの人はそれに浮かれることなく、成功からどうやって波に乗っていくのか考えて、常に新しい挑戦をしていくしかありませんね。
 あなたはどちらのタイプですか。どちらのタイプでも自分を理解すれば成功者になれるのですね。