院長の独り言
Monologue

2014.1.30

信じ切ること

本日の新聞の一面に小保方晴子さんがIPS細胞よりもさらに簡便に作れる万能細胞を作って世界的な雑誌「ネイチャー」に発表したことが載っています。 2008年に投稿した際には「何百年の細胞生物学の歴史を愚弄している」と突き返されているとのことです。マウスの体細胞に弱酸性の刺激を加えるだけの簡便なもので、実用化すればノーベル賞受賞の山中教授の作ったIPS細胞よりも短期間で簡便に作れることが今後の移植医療をさらに飛躍させるかもしれない大発見なのです。
彼女がたどった歩みの中で成功へのヒントが隠されていました。早稲田大学を卒業後に留学したハーバート大学の教官が幹細胞(万能細胞)は他の細胞よりも小さい」との助言から大きな細胞をより分ける作業の段階で、失敗を重ねながらこの方法をあみ出したとのことです。普通の人間なら今までの方法論から抜けだせずに、同じやり方の延長線上にしか考えが行かず、画期的な研究は難しいものですが、彼女は自分の努力してきた道を信じきったからこその結果であると思いました。他にもそんなことを言っていた一流の人たちがいたなと今回は信じきるというテーマで2014年の独り言を始めたいと思いました。
現在、囲碁の日本一の名人と言えば井山裕太さんです。5歳から父親が買ってきたテレビゲームで囲碁を始め見よう見まねで上達して、小学生で石井邦生プロに弟子入りして、弱冠24歳で史上初の7冠を達成しています。師匠の石井プロは井山さんに細かいことは何も教えずに、ただ今までにネット上で異例の1000局もの対局をして、本人の対局の目を養わせたのことです。この井山裕太さんが、自分が最も大事にしていることは難局において「自分を信じきって打つことです」と述べています。多くの努力と工夫を積み重ねてきた結果難局で多くの棋士があっと驚く手を打って、井山さんにしか打てない手だと言わせて勝ってしまうのです。小さい頃から多くの対局をこなしてきての、自分にしか理解できない手筋を浮かべるのでしょう。
もう一人多くの日本人が応援する浅田真央さんです。来月、自分自身の集大成といっているソチオリンピックを迎えます。小さいころからジャンプの天才で、トリプルアクセルをクルクル飛んでいた真央ちゃんですが、体が大きくなって簡単にはトリプルアクセルが飛べなくなってきました。4年前のオリンピックではぎりぎり飛んでいますが、見栄えの点数が悪く、トリプルアクセルに力を使い果たして後半のジャンプで失敗してキムヨナに負けていましました。その後はトリプルアクセルを封印して、スケートを基礎からやり直してキムヨナレベルのスケートの技術を身につけることが出来ています。もし彼女がトリプルアクセルを封印すればキムヨナに勝てる確率は上がるでしょうが、最後に彼女の拠り所はトリプルアクセルなので、例え失敗してもトリプルアクセルを入れて、自分を信じきってソチに望むようです。同じ日本人として彼女を誇りを持って応援して、例えトリプルアクセルに失敗しても、勇気をくれた日本人として賞賛して上げるべきだと思って、暖かく見守ってあげたいと思います。
この信じきるという考えは、多くの経験や失敗を重ねて謙虚に見つめなおした結果として、この道を信じきるということで、前提にあるのは多大な努力であるということを忘れてはいけません。
この一年が皆さんにとって、信じる道を進めることをお祈りしています。