院長の独り言
Monologue

2013.12.30

華原朋美の復活に思う

今年の11月頃の歌謡祭で華原朋美が小室哲哉の弾くピアノに合わせて立派に歌い、最後に小室に私はもう大丈夫ですと語っている姿を見て、涙を流すと同時に人間の復元力の凄さを感じました。
 小室との仲が壊れて、歌うことも普通の生活も出来なくなった華原はテレビで見ていて本当に惨めな姿でした。世間では解離性障害などの精神疾患の噂もありましたが、守秘義務が守られてはっきりした疾患は最終的に薬物依存症だけでした。自由奔放な姿がテレビの画面から消えていましたが、昨年位から復活することができて、以前よりも歌も上手くなり人間としてかなり成長した姿を見せてくれました。小室哲哉も何年か前に詐欺事件で逮捕されそうになり、エイベックスの社長やら、妻に助けられて最近やっと本来の才能を活かす場面が出来たようです。そのどん底に落ちた二人が復活して握手する姿を見て、人間は恨みつらみを乗り越えて、懸命な努力と周囲の助けで這い上がった時には、以前よりもかなり成長することが出来るんだなと、改めて認識することが出来ました。
 人は誰しも好んで試練に遭遇する人はいませんが、世に言う成功者のほとんどは自分なりの大きな試練を乗り越えて成功しています。遭遇する試練を乗り越えることが出来ずに、衰退していく人も多くあるのでしょうが、試練を受けずに大成功する人は殆どいません。 
 つまり、成功者にとって大小にかかわらず試練は必要条件なのです。大成功なんていらない平凡に暮らして行ければそれで良いと考えていても、大なり小なりの試練は誰にでも訪れます。それは人は自分一人では生きて行くことは出来ず、必ず誰かの世話になりながら生きていく動物だからです。自分一人の人生では試練は防げても、家族や周囲の人達の波や自然災害や不慮の事故など努力ではどうしようもない出来事に遭遇するからです。その時にその人の真価が問われ、その試練に真正面からぶつかって乗り越えた時に人間としてまた一回り大きくなります。神様は悪戯でその人にまたさらなる試練を与えますが、大きくなって行った度量はさらなる力を発揮して乗り越える事ができます。
 華原朋美も小室哲哉も絶頂期には考えもしなかったでしょう周囲の人への感謝の気持ちを、現在は大きく感じていることでしょう。歌えることへの感謝の気持、歌を作って行けることへの幸福感が彼らの気持ちを支配していることでしょう。でないとトラブルの合った相手を思いやって握手することは出来ません。
 自分も54年の人生を振り返って見ても、もし19歳の時に父が死なずに現在も生きていて経済的に彼に頼っていたり、あるいは28歳の時に実家の建設業を叔父が倒産させなかったら、困った人の気持など理解できずに現在の自分はなかったであろう。もし、31歳で公的病院の病院長になって病院内の数々のトラブルに遭遇していなければ、経理の勉強や労務管理の勉強もせずにいて、現在大変苦労したであろう。もし、開業間もない頃、共に開業した外科医とすれ違いがなければ、現在もっと苦労していることなどは想像できます。
 私は十年周期で人生の岐路が訪れます。9歳で斜視の手術を受けて医師を志し、19歳で父逝去。29歳で妻と結婚してどん底から共に乗り切ってくれるパートナーを得る。39歳で斐川中央クリニック開業。49歳で15年ぶりに剣道をしてアキレス腱断裂を経験して、自分の老化を思い知る。さて、59歳は5年後に訪れるのか、自分も年を取っていくので軽い試練であって欲しいのですが、何が来るのか今から楽しみにしています。
 みなさんも今年を総括して大変良かったと思える人は数少ないでしょうが、例えどんな試練に遭遇しても、落ち込むことはありません。真正面から取り組んで乗り越えた時には、例え自分の財力や体力は衰えていても、将来の試練に備えての人間力はついています。その人間力は銀行に担保として取られることもなければ、泥棒に盗まれることもない自分の心に身についたかけがえのない財産ですから。その時に共に戦ってくれたパートナーや仲間は一生大切にしましょうね。

 皆さんにとって来年も良い年になることを、心からお祈りしています。